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おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!



このコーナーでは、連続講座の講義の中で取り上げられた本を紹介いたします。
                
2018年の栃木子どもの本連続講座のテーマは「東欧・南欧の子どもの本」です。このコーナーでは講義の中で取り上げられた本をごく一部ではありますが、紹介します。
                        




おすすめ本
2018年=東欧・南欧の子どもの本=

足達和子氏の講座
題名  作者  訳者  出版社

『はしの うえの しあわせ』

ポーランドの
むかしばなし
 足達和子 フレーベル館
   このお話はポーランドの西部海岸地方に伝わる昔話です。
川のほとりに百姓の一家が住んでいました。その日の食べ物にも困る貧しい暮らしです。あるとき百姓は3晩続けて同じ夢を見ます。
「シチェチンにいってごらん。おおはしのうえでしあわせにであうから」と。
百姓は藁にもすがる思いでシチェチンにでかけて、橋の上で待っていると・・・。
夢のお告げの通り、百姓は思いがけない富を手に入れます、それももっとも身近な所で。ここまでは日本の昔話『みそ買い橋』に良く似ています。
 ポーランドのこのお話は先があります。この金貨は、実は祖父が隠していたもので、その金で百姓の一家は、祖父の夢であったシチェチンで食べ物屋を開き、お店は栄え、末永く幸せに暮らします。
 この結論は、家族こそが幸せで、実直に生きていればいつかは幸せが訪れるのだという庶民の願いが込められていて、心が和みます。脈々と流れる人と人とのつながりは、先祖に守られているという思いを感じさせ、しあわせな気持ちにもしてくれます。因みに〈シチェンシチェ〉はポーランド語で、〈幸せ〉という意味だそうです。
 篠崎三朗の絵も親しみやすく、お話の雰囲気を良く伝えています。また著者のあとがきのポーランドの紹介は、遠い国への興味を駆り立ててくれます。
ポーランドの昔話
『仕立屋のニテチカさんが王さまになった話』

 コルネル・
マクシンスキ再話
足達和子  偕成社
   陽気な仕立屋のニテチカさんは、針の穴をくぐりぬけられるほどのやせっぽっち。
ある日、ロマの占い女から「西へいけば、王さまになれる」と言われ、針100本、糸1000メートル、裁縫道具一式を持って旅にでます。途中、かかし伯爵と相棒になり、奇妙な取り合わせのふたりの道中は、おかしな冒険の連続です。素っ頓狂で軽妙なやりとりもかなり楽しめます。
 やがてふたりはどしゃぶりの雨が降るパツァヌフの町につきます。王さまが亡くなり天に大穴があき、雨が止まらなくなってしまったのです。さあ、洪水で亡びそうになっている町を救うために、ニテチカさんが考えた解決策とは・・・。奇想天外でとびきり愉快な昔話です。
 このお話は、ポーランドで最も明るい作風として知られるマクシンスキが出版した昔話集『とても不思議な話』から採録したものです。パツァヌフの町はポーランドの昔話では、おかしな人ばかり住んでいる町として語られています。
この絵本のために描き下ろしたオルリンスキの色彩豊かな、ユーモアあふれる絵は、この昔話にぴったりで、絵だけでも十分に楽しめます。
ポーランドに精通した訳者のあとがきも必読で、お話の面白さを倍増させてくれます。
『ぼくはナチにさらわれた』
 アロイズィ・
トヴァルデツキ
足達和子  共同通信社
 ナチはこんなこともやっていたのか!と初めて知り、驚きました。

第二次大戦中、ドイツに占領されたポーランド西部の町々では、20万人以上と言われる、2歳~14歳のポーランド人の少年少女がナチによってさらわれたのです。幼児誘拐はポーランドに限らず、周りの国々にも及びましたが、その目的は戦争によって失われた最も優秀なアーリア民族の血を補うことでした。ですからポーランドから誘拐された子どもたちは皆金髪青い目で、ドイツ人家庭の養子となり、ドイツ名を付けられて、ドイツ人として育てられたのです。

 この本の著者も4歳の時、ナチにされわれ、ドイツの孤児院に入れられ、ドイツ人の家庭でアルフレートという名前を付けられてドイツ人としての誇りと、他の民族に対する差別意識を植え付けられます。家庭の中では可愛がられ、愛されて育ちますが、戦後11歳の時自分が誇り高きドイツ人ではなく、最も下等だと考えて来たポーランド人だったと知り、衝撃を受けるのです。著者が真実を知るに至ったには、実の母親の執念ともいえる、自分の子を必ず取り戻すという強い思いがありました。この自伝はナチが行った戦争犯罪を記録する貴重な歴史です。


木村有子氏の講座
題名  作者  訳者  出版社

『こいぬとこねこのおかしな話
ヨセフ・
チャベック
 木村有子 岩波少年文庫
   こいぬとこねこは、人間のきちんとした生活にあこがれて、床のそうじをしたり、ケーキを焼いたりしますが・・・・・。気のいいこいぬと、しっかりもののこねこのおしゃべりが笑いをさそう、ゆかいな10のお話が入っています。

『金色の髪のお姫さま』
 カレル・ヤロミール・エルベン 木村有子  岩波書店
 動物たちの言葉がわかる若者の冒険を描く表題作のほか、『オテサーネク』、『のっぽ、ふとっちょ、千里眼』など全13篇が納められたチェコの昔話集。  繊細な挿絵でお話の世界がいきいきと広がります。
『きつねものがたり』
 ヨセフ・ラダ 内田莉莎子  福音館書店
 森番がひろってきた子ぎつねは、毎日子どもたちからお話の本を読んでもらっているうちに、人間の言葉をすっかり覚えてしまいました。すると、お話の中の、かしこいきつねのようになりたいと思うようになり・・・・・  
楽しくユーモラスに語られるチェコのお話です。

『もぐらとずぼん』
 エドアルド・
ペチシカ
うちだりさこ  福音館書店
 青いズボンがほしてあるのを見つけ、ほしくてたまらなくなってしまったもぐらが、 青いすてきなズボンを手に入れるまでの働きを、コミカルに描いています。
  はたおりの仕組みまでわかる楽しい絵本です。

『子犬の生活 ダーシェニカ』
 カレル・チャペック 小野田若菜  ブロンズ新社
 青いズボンがほしてあるのを見つけ、ほしくてたまらなくなってしまったもぐらが、愛すべきいたずら子犬ダーシェニカを、イラストと写真を交えてユーモラスに描いた 犬エッセイの名作。チェコの国民的作家、カレル・チャペックが描く動物エッセーの ロングセラーが、おしゃれな装幀と若々しい翻訳でよみがえりました。

長野徹氏の講座

題名  作者  訳者  出版社

『パパの電話を待ちながら』

ジャンニ・ロダ-リ
 内田洋子 講談社文庫
 イタリアの宮沢賢治とも言われている名作家、ロダ-リの愛が満載の不思議な物語です。ビアンキさんは、イタリア中を行商してまわっています。でも、夜9時きっかりに、電話でお話しを聞かせる約束を娘としていました。夜9時になりました。娘が待ち 望んでいるビアンキさんからの電話が鳴りました。ビアンキさんのお話は、おてんばなミニサイズの女の子のお話、イルカになった少年の話や吃驚するようなキャラクタ-が毎晩登場するのです。ショ-トな話の中に散りばめられた、お腹を抱えるような面白い話、平和に関する話などなど・・・。  こんなにふんだんにお話を毎晩聞かされて育った女の子は、父親不在の寂しさなどどこかに飛んでいき、心豊かな大人に成長したことと思います。 ロダ-リの作品は、想像力の悲しさと、創造力のたくましさが共存していると言われています。『チボリ-ノの冒険』も合わせて読んで欲しい作品です。
『クオ-レ』  エドモンド・デ
・アミ-チス
和田忠彦  新潮社
(新潮文庫)
 エドモンド・デ・アミ-チスはイタリア独立戦争の頃職業軍人でした。独立戦争の目指すものは、「イタリアの統一」でした。この理念を子どもたちに訴えようとして、子どもたちのために「クオ-レ」を書きました。「愛の学校」とも言われように、愛国心、犠牲的精神、奉仕の精神、友愛と言ったものを物語に盛り込み、子どもの心を動かすための物語です。トリノを舞台に、少年エンリ-コが毎日の学校生活を綴った日記と、先生の『今月のお話し』九話を纏めた本です。この中には、ジェノヴの少年マルコが母を訪ねてアンデスを旅する「母を訪ねて三千里」も含まれています。

『イタリアの民話集』上・下
 イタロ・
カルヴィ-ノ
河島英昭  岩波文庫
 『グリム童話集』に匹敵する民話集をという出版社からの依頼で作成することになったイタロ・カルヴィ-ノは、自分自身の作家活動の一切をなげうち、熱意を持って膨大な資料収拾に努めました。イタリア全土から集めた典型的な民話200編を選んで出版しました。 文庫本『イタリアの民話集上』は北イタリア編とし、『イタリアの民話集下』は南イタリア編とし、選りすぐりの75編を納めています。巻末には、カルヴィ-ノ自身の「民話を求める旅」も載っています。  おとぎ話風、教訓的な話など、一つ一つの作品は短く読みやすくなっています。巻末を読んで感じることはそれぞれと思いますが、イタリアを知る切っ掛けに読まれるのも良いのではないでしょうか。



 作者  訳者  出版社

『はしれ!カボチャ』
エバ・メフト  宇野和美 小学館
 孫から結婚式の招待状を受け取ったおばあさんは、ある日、お洒落して出かけます。 ところが、途中恐ろしい動物が次々と現れ「お前を食ってやる!」と襲ってくる。おばあさんは、その度に「痩せっぽちだから美味しくない。帰りには太ってくるから」と難から逃れようと言い訳けします。動物達はおばあさんを見て「骨ばっかり」「皮ばっかり」「筋ばっかり」と各々納得し見送り、太ったおばあさんの帰りを待ちます。結婚式を楽しんだおばあさんは帰りに恐ろしい動物達のことを思い出し焦ります。それを知った孫は大きなカボチャに穴を開け、おばあさんを突っ込んで道に転がします。この場面は見開き一面に大きなカボチャと、おばあさんの洒落た赤い靴と編みタイツの立派な足が描かれ迫力あります。 カボチャは転がって逃げますが、おばあさんは無事家に戻れるでしょうか?表紙は秋色で見返しには32個のカボチャが描かれ、タイトルページには立派なカボチャがデン!と置かれています。ページをゆっくり捲っていくと、これから始まるお話を暗示して聞き手の期待が膨らみます。昔話らしい3回の繰り返しもリズミカルで楽しめます。秋にお勧めの1冊。
『むこう岸には』  マルタ・カラスコ
宇野和美  ほるぷ出版
 黒髪で浅黒い肌の女の子グラシエラが暮らす村は、川の岸辺にあります。でも、むこう岸には、変なものを食べて、なまけものの、グラシエラたちと違う人たちが住んでいるそうです。だから川を渡ってはいけないことになっていました。  でも、ある日むこう岸で、金髪で白い肌の男の子が手を振っていました。グラシエラもつい手を振ると男の子がにっこりするのが見えました。そして次の日、男の子が用意したボートに乗って、グラシエラはむこう岸に渡ります。むこう岸の人たちは、へんてこりんだけど、同じところもいっぱいあり、ふたりは友達になりました。二人の夢は大人になったら、この川に橋を架けて何万回でも会いに行けるようにすることです。  チリの有名なイラストレーターの描いた、平和を願う心温まる絵本です。

『ベラスケスの十字の謎』
 エリアセル・
カンシーノ
宇野和美  岩波文庫
 17世紀のスペインを代表する画家、ベラスケスの作品「侍女たち」に描かれた小人の少年ニコラスが、絵の謎を解き明かす、ミステリアス・ファンタジーです。イタリアからスペインの王、フェリペ4世のもとへ連れてこられた小人症の少年ニコラスは、宮廷画家ベラスケスの館で暮らすようになり、画家が取り組んでいる絵にかき入れられることになります。この画家は謎の男ネルバルとあるものを引き換えに、「侍女たち」に時間を閉じ込める水時計を描き込みます。この絵はプラド美術館に実在するスペインでは知らない人がいない作品です。実在するものと物語が怪しく交差して、面白い作品になっています。絵の中のベラスケスの胸のところに赤いサンティアゴの十字がついている。この絵を描いたときにはまだ騎士になっていないのに描かれているという謎を、小人を主人公にして解き明かすファンタジーです。小人であることは宮廷の人びとの近いところにあり、道化であることが、尊敬もされている特別な存在なのです。はじめは一人ぼっちだった少年が不思議な出来事に巻き込まれながら、自分を確立していく姿がえがかれています。実物の絵が見たくなる物語です。  

『雨あがりのメデジン』
 アルフレッド・
ゴメス=セルダ
宇野和美  鈴木出版
 南アメリカ、コロンビアの第二の都市メデジン。主人公のカミーロは、暴力や薬物、貧困など多くの社会問題を抱えた貧しい地区(バリオ)に住む10歳の男の子です。過酷な環境の中、学校にも通えず、酒浸りで暴力を振るうお父さんにはお酒を買いに行かされ、そのために盗みも働いてしまう毎日です。谷に広がるきれいな街並みを見下ろすのが何よりも好きで、どんなに辛く困難な毎日であっても、親友のアンドレスと一緒に乗り越えていきます。 ある日、山の斜面に新しく図書館ができます。工事中にレンガを盗んだために近づきがたかったものの、恐る恐る足を踏み入れます。そこで、図書館員のマールさんと出会い、手渡してもらった1冊の本がふたりの未来を少しずつ変えていきます。図書館は、荒れたメデジンの人々に一筋の光をもたらしてくれる、希望の館です。厳しい現実の中でも、図書館員や本との出会いによってカミーロたちの心にも変化が現れ、眼下に広がるメデジンの美しい街並みのように、ふたりの未来が広がっていくような予感がします。 作者は日本の読者に向け、「図書館は未来への希望です。文化のないところに人間らしい未来はありません。危険にさらされているちっぽけな希望ですが、それはひと筋の光であり、荒れくるう海に投げ込まれた命綱です。メデジンはここ数十年、ずっと暴力の問題をかかえ、その根絶のために闘ってきました。その闘いに感銘をおぼえるわたしが、作家としてできるのはこの本を書くことだけでした。これは国境のない本です。特定の場所を舞台にしていますが、すべての読者の地平を広げる本、物理的な地平ではなく、社会や心理や感情、つまりわたしたちの命の地平線をおし広げる本であるよう願っています。」と記しています。 (2008年アラデルタ児童文学賞、2009年スペインの児童文学会で最も権威のある国民児童文学賞受賞)





                            


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