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おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!


栃木子どもの本連続講座の今年のテーマは「フランス・ベルギー・オランダの子どもの本」です。


このコーナーでは、連続講座の講義の中に取り上げられた本を、ごく一部ではありますが、講座の順に取り上げ、紹介していきます。
                        おすすめ本
1:末松氷海子氏の講座

2:石津ちひろ氏の講座

3:野坂悦子氏の講座

4:西村由美氏の講座

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『だれも知らなかった お姫さま図鑑』

フィリップ・ルシェルメイエル
レベッカ・ドートゥルメール
石津ちひろ
講談社



 『お姫さま図鑑』には、かずかずの物語や逸話、秘密、そして肖像画が集められています。そのなかには、笑えるものや、おそろしいものもあれば、夢のふくらむものもあります―と、裏表紙に記されています。
 また、表紙絵は〈ドスンバタン戦争以前のゲリラ姫〉の何とも個性的な肖像画です。
 女の子は誰しも一度は可愛いお姫さまに憧れると思いますが、その思いでこの本を手にした読者は、多いに予想を裏切られます。そして一風変わったときめきと、妖しい迷路の中に放り込まれるでしょう。
〈ページ姫〉〈すやすや姫〉〈きまぐれ姫〉〈かたぶつ姫〉〈ゲリラ姫〉……。どのお姫さまも一筋縄ではいきません。ドキリとさせられたり、ハラハラさせられたり。耳慣れないお姫さまが登場しますが、意外に現実感があります。またどのページの冒頭にも、ピリッと風刺の効いた格言が載っています。〈すやすや姫〉の格言は―眠り、それは未知の物語を生み出すもの―、〈かしまし姫〉は―言葉は旅に出る、そして戻ってくるころには、もはや意味不明―、〈きまぐれ姫〉は―きまぐれ…それは自己愛からほとばしるしぶき―。
 いかにもフランスらしいエスプリの効いた数々のことばの前で、ふっと立ち止まって考えさせられます。また芸術的でおしゃれなイラストにも多いに魅せられます。
 最後には、〈本物のお姫さまを見分ける秘訣〉や〈お姫さまの診断テスト〉まで載っていて、読者の〈お姫さま度〉も測れます。    
本書は、一味も二味も違ったシュールな切り口で、お姫さまの奥深さを語った楽しさ満載の大人向けお姫さま図鑑です。


『フランシスさん、森をえがく』

フレデリック・マンソ石津ちひろ
くもん出版

これは最新の石津ちひろさん訳フランスの絵本です。
主人公のフランシスさんが森のモアビの木の枝に乗り、大好きな森を描いている表紙にまず目を奪われます。そしてこの表紙は『かわいいことりさん』(クリスチャン・アールセン/作 石津ちひろ/訳 光村教育図書)を思い起こさせます。鳥のすきなプリュームさんが、やはり大きな木の枝に乗っている絵が印象的です。
 さて、一日中森を描いて過ごすフランシスさんにとって森がなくなるということは、自分の命がなくなるということでもあったのですが、フランシスさんの涙に触発されてモアビの木が森を再生させます。また、鳥の観察を仕事とするプリュームさんは、奥さんのマドレーヌさんを「かわいいことりさん」と呼んでいましたが、ある日死んでしまいます。でも命は命を呼び起こします。
 森や鳥などの自然と人との関わりにあらためて心惹かれます。この不安に満ちた時代だからこそ自然との共生を強く望むのでしょうか。







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