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おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!


栃木子どもの本連続講座の今年のテーマは「ロシアの子どもの本」です。


このコーナーでは、連続講座の講義の中に取り上げられた本を、ごく一部ではありますが、講座の順に取り上げ、紹介していきます。
                        おすすめ本

          



松谷さやか氏の講座
                       
『こねずみとえんぴつ―12のたのしいおはなしとえのほん』  
ステーエフ さく/え
松谷さやか /訳
福音館書店



 2013連続講座では松谷さやか先生にたくさんのロシア児童文学を紹介していただきましたが、その中の1冊、幼児のためのおはなし集 『こねずみとえんぴつ』をご紹介いたします。
この本はソビエトアニメーション映画創始者としてのステーエフの、動きを感じさせる絵と、松谷先生のいきいきとした翻訳で、12のおおはなしが本の中から飛び出してくるようなとてもたのしい絵本です。
「三びきのこねこ」の愛らしさやハラハラする展開、「たすけぼう」に出てくるはりねずみとたすけぼうをばかにしているうさぎが少しずつ変わっていく様子、本の題名になっている「こねずみとえんぴつ」は子どもと一緒にえんぴつを持って書いてみたくなりますよ〜。どのおはなしも、ちいさな子どもたちに読んでやるだけでなく、幼稚園や小学校ですばなしをなさる方にもおすすめです。


『森からのてがみ』  
N・スラトコフ /作
松谷さやか /訳  あべひろ士/絵
福音館書店


1、 キツツキは森の大工さん/きかんぼうの子グマ
  2、 クマのねがえり/ハリネズミのしっぱい/かしこいノウサギ
  3、 まるたの上のキツネとノウサギ/あたしはだれでしょう?
     子リスのしごと/十二月のさいばん


 この本は3冊のシリーズ本です。作者のスラトコフは、ロシアの代表的な動物文学作家のビアンキの指導を受け、ビアンキの伝統を受け継ぎ、自然と人間のかかわりを描いています。
 スラトコフの愛情に満ちた動物記と、あべ弘士の躍動的な動物の絵がとても素敵な絵本です。

〜キツツキは森の大工さん〜
キツツキは、働き者の森の大工さんです。あちらこちらの森の木に、くちばしで穴をあけます。キツツキはじぶんが掘った穴に誰が住んでいるのか知りたくなりました。キツツキは、穴には同じような鳥が住んでいるとばかり、思っていました。
 穴をのぞいてみると、ヤマネ・コウモリ・モモンガ・ミツバチなど、思いもよらなかった動物たちが住んでいたのです。
キツツキはまた誰かのために穴をあけています。


海と灯台の本
V・マヤコフスキー 
松谷さやか/訳  B・ボクロフスキー 絵               
新教出版社


1927年に絵本として出版された、原題『海と灯台についての私の本』が、この本の底本です。革命詩人のV・マヤコフスキ−は、「灯台(マ−ヤ)」の響が似ていることから、強い自負と信念を込めてこの詩を謳いあげました。この詩は、ソ連時代の小学校3年生の国語の教科書にも載っており、「子どもたちよ、灯台のようであれ、闇に苦しむ人々のため、光で進路を照らしなさい・・・」この熱いメッセ−ジを子どもたちは心に刻み込んだことでしょう。B・ボクロフスキ−の絵とともに愉しめる一冊です。



田中潔氏の講座

ロシアのお話  『ハリネズミと金貨』
 V.オルロフ/原作 
田中 潔 /訳 V.オリシヴァング/絵
偕成社


冬間近の森の中、雨に打たれて金貨が濡れています。きらきら光る金貨が、ハリネズミのおじいさんの目に留まりました。
金貨を拾ったハリネズミ、その金貨で冬ごもりのための「干しキノコ」を買おうと、売っている場所を探します。声をかけてくれたリスが「キノコが欲しいならただであげるわよ」と干しキノコのいっぱい詰まった袋を投げてくれました。リスはその金貨はくつを買うのにつかうといいと教えてくれます。
 くつを探しに行ったハリネズミは、カラスにどんぐりのくつをただで作ってもらい、靴下はクモから、咳止めのはちみつは子グマから、と冬ごもりに必要なものは金貨を使わずにみんな森の仲間からもらいます。
 さて、手にしている金貨は‥‥。ハリネズミのおじいさんは、「だれかの役にたつかもしれんしな!」と、落ちていた場所に置きました。そして、満ち足りて冬ごもり。春になったら「また会おうね!」
 あれ、このお話何かに似ている、と感じるでしょうか。いや、こういうお話なら知っている、と思うでしょうか。が、ここにロシアの国民性が隠されているのかもしれません。講師曰く、困っている人がいたら自分のことを顧みずに手をさしのべてしまう人の好さを、かの国の人たちは持っている、とのこと。そんなロシアの国民性が表された絵本かもしれませんね。(もっとも、そんなこと考えずにただ物語を楽しんだ方がいいと思いますが)

 


『ワニになにがおこったか』  
M.マスクビナー/原作
田中潔 /訳  V.オリシヴァング/絵
偕成社


アフリカワニのガーパは、子ワニが生まれるのを楽しみに待っていましたが、生まれてきたのは鳥のヒナでした。さあ、たいへん!ワニの集団の中に鳥のヒナが混じっちゃった。
パパとなったガーパは、混乱から立ち直るとヒナを手探りで育て始めます。
エサは?飛び方は?そんなガーパの健闘にワニの仲間は冷たい視線。
 この絵本はいったいどのあたりが対象年齢なのだろう。大人だから大人の読み方をしてしまう。するとワニの世界の話なのに妙に人間っぽい。なんだか身につまされる。
成鳥になった鳥と空を泳いで旅だったワニのガーパは、今頃どこかにワニと鳥が一緒に暮らしていける場所を探し当てたのでしょうか?そんなことは心配せず、「幸せの国」へ旅立つ、ハッピーエンドと考えればいいのでしょうか?



『ごきぶり大王』  
K.チェコフスキー/作
田中潔 /訳  S.オストーロフ/絵
偕成社


コルネイ・イワーノビッチ・チュコフスキーは20世紀前半のロシアを代表する文学者、評論家、翻訳家、詩人です。特に児童文学の分野ではロシアの子どもたちから“シュードゥシカ(おじいさん)”と呼ばれて親しまれました。幼年向けの絵本では、詩形式の物語を得意とし、この『ごきぶり大王』もそのひとつです。
 クマのおやこがはしってく   ネコはゆったり ゴロゴロと   蚊のきょうだいは ふわふわと 
オオカミたちは 白い馬   ライオン一家は マイカーで   みんなわらってる はしってく 
そこへとつぜん あらわれた  茶色いヒゲの かいぶつが   ごきぶり王が あらわれた!
 さあ、たいへん!動物たちは大混乱。オオカミも、ワニも、ライオンも、あの大きなゾウまでもいちもくさんににげだした・・・。
発想が奇抜で、ナンセンスと空想にみちていて、とにかく楽しい。こどもの心理をよくつかんでいて、ユーモアの中にもハッとするような機智に富んでいて、幼児から幅広い年齢の子どもが楽しめる絵本です。韻をふんだ口調のよい語り口は、思わず声にだして読んでみたくなります。オストローフのダイナミックな絵もお話にマッチしていて、楽しめます。
『おおさわぎ』『フェドーラばあさん おおよわり』『あらうよバシャザブーン』『でんわ』
『ロシアのわらべうた』等、一連のチュコフスキーの絵本もお勧めです。


『ハリネズミくんと森のともだち』  
セルゲイ・G・コズロフ/作
田中潔 /訳  S.オストーロフ/絵
岩波書店


本書は、現代ロシアの人気児童文学作家、セルゲイ・G・コズロフによって1987年に描かれました。
 深い雪に埋もれていたロシアの大地も、がんこな冬じいさんが去ってしまうと、森は毎晩どしゃぶりの雨と雷。それも止むと春は一挙にやってくる。森は洗い立ての笑顔のように輝きはじめ、いっせいに花が咲き、小鳥たちの囀りが木の上からシャワーのように降りかかる。やがて白い霧にすっぽりと包まれる夏の夜。そして、短い秋はあっという間に走り去り、また激しい吹雪に閉じ込められる冬。
 そんな森に住むお人好しで空想好きのハリネズミくん。彼の周りには仲間がいっぱい。おちゃめな子グマ、慎重派のロバくん、怖がり屋のウサギ、リス、オオカミ等々。この本は彼らが繰り広げるちょっと変わった楽しいお話の数々です。
(ゾウにのって霧の夜を散歩する話)、(あまいニンジンの森にハチミツの雨がふる話)、(ハリネズミと子グマが星をみがいた話)等々、20余編の小話で成っています。
 最先端の文明に囲まれた今の子どもたちとは対極にある世界です。でも森に住む彼らの毎日が、会話のひとつひとつがなんと香しく、愛しく、生き生きと感じられることでしょうか。森の清浄な空気、降るような星のまたたき、白い霧の夢幻の世界が膚で感じられるようなお話です。小学生中学年にお勧めの本ですが、大人の読者にも心の〈みずうみ〉に静かに降りてくるような良書です。
 ユーリー・ノルシュティン監督の短編アニメ『霧につつまれたハリネズミ』はこの作品が原作になっています。


児島宏子氏の講座

『きりのなかの はりねずみ』  
ノルシュティンとコズロフ /作
ヤルブーソワ/絵
児島宏子/訳
福音館書店



 夕方ハリネズミは友達のこぐまと星を数えたくて出かけます。
おみやげは、こぐまの大好きな野苺の蜂蜜煮。
途中で白い馬を見つけたハリネズミは霧の中に入って行きます。
ハリネズミは全感覚のアンテナをピンと立て、恐ろしいものや善意あるものに遭遇しながら、手探りで進んで行きます。
倒木に腰かけ星を数える2人の後姿に読み手はホッとする事でしょう。
友達と目的を共有し叶った時の喜びの心を捉えた詩情豊かな絵本です。
幼児から大人まで楽しめます。


『ワ―ニカ』  
アントン・P・チェーホフ/作
イリーナ・ザトゥロフスカヤ/絵
児島宏子/訳  
未知谷


チェーホフの短編がチェーホフ・コレクションとして、絵本になって出版されています。『ワ―ニカ』はそのうちの一冊です。日本ではチェーホフの「三人姉妹」や「桜の園」などの戯曲は有名ですが、短編はあまり知られていないようです。
 9歳の少年ワ―ニカは地主屋敷で掃除婦をしていた母親が死んだあと、モスクワの靴職人のところへ見習い奉公へ出されました。まだお屋敷で夜警をしているおじいちゃんにあてて、せつせつと辛い境遇を手紙に書きつづります。いじめられ、こきつかわれてこのままでは死んじゃう。一方田舎とは違うモスクワで見聞きしたことを興味しんしんで書きもします。〈大すきなおじいちゃん、おねがいだから、ボクをうちにつれかえってください〉クリスマスの前夜、親方たちが夜中のミサに出かけるのを待って、しわくちゃの紙切れを広げてすすり泣きながら書いているのです。というのもワ―ニカは、肉屋の店員たちが手紙はポストに入れれば酔っぱらった御者がどこまでも運んでくれるというのを聞いたからなのです。〈村のボクのおじいちゃんへ〉と宛先を書いたワ―ニカは、外套も着ないで通りに走っていき手紙をポストに入れました。ワ―ニカがあまい希望を抱いて眠りにおちるところで、話は終わります。せっかくのこの手紙はおじいちゃんのところへは届かないでしょう。稚拙とも思える挿絵がやり場のない悲しみを強調しているようでもあります。
 世界中で昔も今もこうした涙を流す子どもたちの事を思うと、胸が締め付けられる結末ですが、チェーホフのペンはワ―ニカを今目の前にいるように、いきいきと描きだしま
した。


エゴール少年
アントン・P・チェーホフ
エカテリーナ・ロシコーワ/絵
中村喜和/訳               
未知谷


これもチェーホフ・コレクションの中の一冊で、既訳は『曠野』として知られた中編ですが、抄訳絵本として非常に抑制された色彩の絵を添えて出版されています。モノクロに近い絵は、ロシアの大平原の単調な木や草や風景を淡々と綴っていきます。
 ワ―ニカと同じく9歳の少年エゴールは、中学校入学のため初めて母親から離れて、羊毛を売りに行く商人の伯父と共にバネなしのがたがたの馬車で、果てしない大地を旅していきます。母親の望みに従ったものの、エゴール当人は心細い思いを抱き、行けども行けども始まりも終わりもないような平原に圧倒されながらの初めての旅です。当時のロシアのふつうの人々の生活やありふれた出来事に、読者もエゴール少年の目をとおして次々に出会うわけです。現代の日本とは全く異なる風景の中を、一編の映画を見ているような感覚で読者も旅してゆく、そんな絵本になっています。



伊東一郎氏の講座

おしゃべりはえの子ぶんぶんこちゃん』  
チュコフスキー /作
ミトゥーリチ/絵
佐伯靖子/訳
新読書社



 ロシア語でハエは女性名詞だそうですので、この主人公のハエは女の子です。ぶんぶんこちゃんの誕生日に、のみやごきぶり、みつばちのおばあちゃん、びじんのちょうちょなどむしたちがお祝いに。ところが、くものしわくちゃじじいにぶんぶんこちゃんがつかまってしまいます。そこに颯爽と現れたのが、かわいいかのぼうや。かは男性名詞です。さあ、どうなる?ぶんぶんこちゃん!ミトゥーリチの絵は、とてもおしゃれで素敵です。


『子どもに語る ロシアの昔話』  
N伊東一郎 /訳・再話
茨木啓子/再話
こぐま社


この本は、19世紀にはじめて本格的なロシア民話集を出版したアレクサンドル・アファナーシエフの『ロシア民衆昔話集』の中から色々なジャンルの13編のお話を収録しています。バーバ・ヤガーや火の鳥、不死身のコシチェイなど不思議な者達が登場し、勇敢な王子や美しい王女が奇想天外な冒険をする魔法昔話を始め、動物昔話や普通のおじいさんやおばあさんが主人公の話など、おもしろくて楽しいお話がいっぱいです。
ロシアでは文字がつかわれるようになったのがおそく、17世紀ごろまで、ロシアの人々にとって、楽しみのための文学は昔話だけだったのです。それで、口承の言葉の芸術が豊富に残っており、この本も、もともとの昔話の語り口を尊重して書かれています。しかも、語りの名手茨木啓子氏による「お話を語る人のため」のアドバイスまでついており、聞いて分かりやすい文章で、語りだけでなく、読み聞かせにもぴったりです。
読んであげるなら4、5才から、自分で読むなら小学中学年以上。


森は生きている
サムイル・マルシャーク
ワルワーラ・ブブノワ/絵
湯浅芳子/訳                 
岩波少年文庫

森は生きている』は原題を『十二ケ月』(1943年)といい、湯浅芳子が1953年に岩波少年文庫のために訳した時の題名です。
  マルシャークはこれを戯曲として書き、当時のソビエトはもちろん日本でも何度も上演されました。この作品は、マルシャークがスラヴの『十二ケ月物語』を聞き、それを基にかかれたもので、大晦日の晩に一月から十二月までの月の精が森の中に集まるという言伝えを下敷きにしています。
  きまぐれな14歳の女王が「新年までにマツユキソウをとどければ褒美をとらせる」というおふれをだしますが、マツユキソウは4月に咲く花です。
そこでまま母とその娘はままむすめを森に探しに行かせ、十二月の精に会えたままむすめはマツユキソウを手に入れることができました。女王にその場所を案内するように言われますが、十二月の精との約束を守り、マツユキソウを見つけた場所を教えない。
厳寒の森の中で、やがてまま母とその娘は犬にされてしまいます。十二月の精はみんな順番におくりものを持って、今や女主人となったままむすめの家にお客に行くと約束をします。




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