おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!
|
|
このコーナーでは、連続講座の講義の中で取り上げられた本を紹介いたします。
2017年の栃木子どもの本連続講座のテーマは「アジアの子どもの本」です。このコーナーでは講義の中で取り上げられた本をごく一部ではありますが、紹介します。 |
題名 |
作者 |
訳者 |
出版社 |
非武装地帯に春がくると
|
イ・オクベ |
おおたけきよみ |
童心社 |
朝鮮半島は南北に分断されています。1953年の朝鮮戦争休戦協定で、南と北の間に248キロメートルにわたる休戦ライン(軍事境界線)が決められました。そこから南に2キロメートル、北に2キロメートルの地帯は、誰も住めず、人の立ち入りが禁止された非武装地帯です。
その地帯は、春がくると、野原には草花が青々と芽吹き、ゴマフアザラシが中国の渤海湾からペンニョン島に泳いできます。
夏が来ると、イムジン河にたくさんの鳥たちが飛来し、巣をつくり雛を育てています。野生動物たちが自由に闊歩し、お腹いっぱい草を食んでいます。
鮭が遡上し、カモシカが元気にかけまわり、渡り鳥の歌声が響き渡ります。
四季の美しい移ろいと、野生動物たちの楽園となったかに見えるこの地帯を一人のおじいさんの思いを通して描かれています。そして、そのそばに2重、3重に張り巡らせた鉄条網、そして監視塔。地下には地雷が埋まり、鉄条網の外側では軍事訓練が行われています。人の住むことのできない美しい楽園は、緊張と衝突の危機にさらされた地帯でもあるのです。
朝鮮半島に住んでいる人たちの、祖国の統一と平和への思いが強く胸に迫ってくる絵本です。
日・中・韓平和絵本シリーズの1冊で、作者のイ・オクベ氏は韓国を代表する絵本作家で、日本では『ソリちゃんのチュソク』などが翻訳されています。 |
朝鮮半島の昔話
『トッケビとどんぐりムク』
|
イ・サンギョ 再話 |
おおたけきよみ |
福音館書店 |
トッケビは日本の鬼とは少し異なるようです。日本の鬼や天狗に似た不思議な存在ですが、
善人には福を与え、悪人には罰を与えるといわれています。この絵本にも四匹のトッケビが登場しますが、ちょっとしわの多い“田舎のおじさん”たちです。
恐ろしいというイメージよりは、むしろひょうきん、と言った方がいいかもしれません。
彼らのふるまいを見るとなおさらです。お話は、母親と一緒に暮らしている貧乏な若者がトッケビにどんぐりムクを食べられてしまいます。トッケビたちはどんぐりムクのおいしさのとりこになってしまい、どうにかしてこのどんぐりムクにありつこうと苦心します。しかし若者は、智恵を働かせてトッケビから大金をもらってしまうという昔話です。 |
とらとほしがき |
パク・ジェヒョン 再話 |
おおたけきよみ |
光村教育図書 |
むかし韓国では身近にトラが出没し家畜や人を襲っていたようです。それでトラは泣く子も黙るほど恐ろしい存在の動物でした。アイゴ~!虎が叫ぶ、アイゴ~!泥棒が叫ぶ。アイゴ~!聞き手も読み手も思わず叫んでしまう絵本。日本の「ふるやのもり」に似た韓国の昔話です。
ある晩、腹を空かしたトラが家畜を狙おうと山から下りて牛小屋に近づくと、家の中から泣き止まない子をあやしている母親の声が聞えてきた。母親が狼や熊が来ると子をあやしたが泣き止まない。この世で一番強いと信じていたトラが来ると言ってもいっこうに泣き止まない。ところが「干し柿よ」と言った途端、アイゴー!子は泣くのをピタリ止めた。トラは自分より恐ろしいものは干し柿だと勘違いし、干し柿に襲われては大変と逃げる。そこへ牛泥棒がやって来てトラを牛と勘違いし背にまたがる。アイゴー!トラの方は恐ろしい干し柿が背に乗ったと思い込み必死で逃げる。読んでみて下さい。トラと暗闇の画の恐怖が重なり、ますます怖さが増して思わずアイゴ~!と叫ぶことでしょう。
再話と絵のパク・ジェヒョンさんはこの本が始めての絵本。韓国に伝わる昔話を韓国伝統の民画風に描き、カナダ総督文学賞の候補作になりました。トラの絵は躍動感溢れ怖いけど表情は滑稽で笑えます。 |
題名 |
作者 |
訳者 |
出版社 |
十万本の矢 (三国志絵本)
|
唐亜明 |
|
岩波書店 |
三国志絵本3冊のうちの1冊目。他の2冊は『空城の計』『七たび孟獲をとらえる』。
いずれも横長の大型絵本です。
中国の三国時代、魏・蜀・呉の三つの国が天下をあらそっていた頃、蜀の軍師、孔明は呉の国の王孫権に「長江で魏の国とたたかうにはどうしたらよいか」とたずねられ、孔明は「船では弓矢がよい」と答えます。すると王は孔明に十日で十万本の矢をつくれ、と命じますが、孔明は三日でじゅうぶんです、と答えます。
これには呉の軍師、周瑜の計略がありました。周瑜は以前から孔明のすぐれた才能をねたみ、なんとかして孔明を殺す機会をねらっていたのです。孔明が三日でじゅうぶんです、と答えると、周瑜は内心喜んで「もし三日で用意できなければ、いのちはいただくことになりますよ」と言って、孔明に約束の文をかかせるのです。
孔明が考えた、十万本の矢を三日で手に入れる計略は、あっと言わせられるほどの鮮やかさです。
有名なお話ですが、京劇のような美しい色遣いの絵で、また人が3頭身くらいのコミカルな絵で描かれ、読み聞かせにも使えると思います。 |
ひとりになったライオン
|
夏目義一 |
|
福音館書店 |
わかいライオンがかぞくをはなれて、ひとりでくらすことになった。」
この一文で始まるこの本は、群れに居られなくなった、若いライオンの初めての狩りのようすのお話です。 母系社会のライオンは、繁殖の時だけオスを必要とし、常に群れに居られるのは一番強いオスだけです。
その群れで育ったとはいえ、ボス(父親)を脅かす年齢になれば、否応なく放り出されてしまうわけです。
ライオンといえば、食物連鎖の頂点に立つ肉食獣としてしか見ていないことに気付きました。そうです。いくら百獣の王ライオンといえども、安穏として暮らしていけるほど、自然は甘くないのです。しかも、この若いオスライオンは、私たちが思ってもみなかった、踏んだり蹴ったりを経験するのです。喰う側も喰われる側も、必死で生きているのだと、改めて思わされる一冊です。
独り立ちしたばかりの、この若いオスライオンの行く末を案じてしまうのは、息子を持つ母だからでしょうか?でも、裏表紙を見て、しっかりと生きていける希望を感じました。 |
トヤのひっこし
|
イチンノロブ・
ガンバートル |
津田紀子 |
福音館書店 |
モンゴルの遊牧民、トヤという少女とその家族の引っ越しを丁寧に描いた絵本です。
大自然の中で生きる遊牧民の暮らし、草原と湖を求めて季節ごとに繰り返されるのであろう遊牧民の生活、どのページにもモンゴルの広さや、大自然とトヤたちの日常が細やかに描かれています。
また、トヤとお兄ちゃんの会話やお父さん、お母さんとの会話に温かく優しい家族の関係が感じられ、心が温かくなります。
日本の子どもたちに是非出会って欲しい本です。
どのページにもストーリーとは直接関係はないけれど・・・小さな動物などがちっちやく描かれていて、どうぞ目を凝らしてさがしてくださいませ。 |
題名 |
作者 |
訳者 |
出版社 |
せいたかだいおう
―ヒマラヤのふしぎなはな
|
広松由希子 |
|
福音館書店 |
ヒマラヤの高山植物は、極寒の地に適応して、みんな体を小さくして生息しています。ところが、せいたかだいおうだけは、7年もの間、根をのばして栄養を蓄え、8年目にはずんずんと成長していって、巨大な植物となります。その姿は、まるで仏塔のようです。そして半透明の葉で温室をつくり、その中に8千とも、1万とも数えられる小さな花を咲かせます。寒いから温室を作った? 自然は不思議に満ちています。(かがくのとも401号) |
はしれ、トト!
|
チョウンヨン |
ひろまつ
ゆきこ |
文化出版局 |
“わたし”のお気に入りは、馬のぬいぐるみ「トト」。ある日、競馬好きのおじいちゃんに連れられて競馬場に出かけたら、トトそっくりの馬がいて……!
競馬場という今までにない物語の舞台設定と幼い少女の目を通して展開されていく人間観察が魅力的です。ゲートに並んだ馬の顔も圧巻です。
第23回(2011年)ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)グランプリ受賞。 |
あかいはねのふくろう
|
フェリドゥン・
オラル |
広松由希子 |
復刊ドットコム |
ふわふわのうぶ毛につつまれた、ふくろうの子。子どもの羽は、まだ白く、わずかに赤い染みができた程度。早く両親のような、立派な赤い羽根を持ち、大空を飛びたいと夢みています。そんな子どもふくろうが、初めての友達・ねずみと出会う。ねずみは、子どもふくろうの羽を赤くするために奔走するのですが・・・
日本各地で行なわれたブラティスラヴァ絵本原画展において、子ども審査員賞1位を多数獲得。2位だったところでも女子部門では1位と、女の子から絶対的な支持を得た絵本です。 |
おばあちゃんは
だれににているのかな
|
フェリドゥン・
オラル |
広松由希子 |
復刊ドットコム |
絵を描くことが大好きな少年アリーは、おでかけするおばあちゃんを動物に見立てて、おばあちゃんが何に似ているかを描いていきます。はたして、おばあちゃんの顔はだれに一番似ているのでしょうか? アリーとおじいちゃんの、おばあちゃんをめぐる掛け合いが楽しい絵本です。 |
題名 |
作者 |
訳者 |
出版社 |
ムルンとサルタイ
|
うだ さちこ |
|
リーブル |
ムルンはモンゴルの草原に暮らす8歳の男の子。7月には夏のお祭り「ナーダム」が行われます。弓、すもう、競馬の競技があるのです。ムルンはおとうさんから競馬にでることをすすめられますが、怖くていやだと断ってしまいます。しかし、「大好きな馬のサルタイとだったら大丈夫だよ」と家族みんなに励まされ、やってみようと決意します。こうしてムルンとサルタイの厳しい訓練が始まりました。
いよいよナーダムの日をむかえ、400頭近い馬がいっせいに走り出しました。さあ、ムルンはサルタイの背に乗って28キロの距離を走りきることができるのでしょうか。
ナーダムがおわると、草原の秋はもうすぐそこです。 |
タチ -
はるかなるモンゴルをめざして
|
ジェイムズ・
オールドリッジ |
中村妙子 |
評論社 |
モンゴルの少年バリュート・ミンガーと、イギリス野生動物保護地区に住む少女キティとのあいだに交わされる手紙でつづられた書簡集です。この本の題名である「タチ」というのは、バリュートが見つけた牡馬の蒙古野馬(もうこのうま)の名前です。蒙古野馬は、先史時代からモンゴルに住んでいたものの、絶滅していると考えられていました。タチは、バリュートが偶然発見した群れのなかにいましたが、バリュートのケガをきっかけにその存在が家族に知れてしまいます。タチは、繁殖目的でイギリスの野生保護地に送られ、動物学者であるキティのおじいさんのもとで過ごすことになります。
ところがタチは、イギリスで伴侶となった牝の仔馬ピープとともに、イギリスの保護地から姿を消してしまいます。タチとピープは、はるか彼方にあるタチの祖国モンゴルをめざして、度重なる危機を乗り越えながらひたむきに冒険を重ねていくのです。ふたりの手紙のやり取りの中で、タチの気質や危険な冒険の様子が報告されますが、読み進めるうちにタチのモンゴルへの思いと、それに応え続けるピープとタチの強い絆が浮かび上がってきます。2頭はどのようにして海峡を越え、ユーラシア大陸を横断していったのでしょうか。厚めの本ですが、タチとピープのひたむきさに引っ張られて、読み終えられることでしょう。 |
ぼくのうちはゲル |
バーサンスレン・
ボロルマー |
長野ヒデ子 |
石風社 |
「ぼくのうちは まあるいうちだよ」 お母さんのおなかのまあるいおうちにいたジルが、この世に生まれてみると、やっぱりまあるいおうちにいます。おうちの名前はゲルといいます。秋になると、ジルの家族はゲルを解体してラクダの背に乗せ、ひつじややぎと一緒に新しい土地に移動します。冬になっても春になっても同じ。季節が変わるごとに長い旅をして新しい土地へと向かうのです。家族のあたたかな愛情とモンゴルの大地に育まれ、ジルは1歳のお誕生日を迎えます。
この絵本では、モンゴルに広がる大地と空、ゲルに住むモンゴル人たちの彩り豊かな装いや食の様子、ゲルの中にある調度品がいきいきと色鮮やかに描かれています。第14回(2004年)野間国際絵本原画コンクールグランプリ受賞作。 |
|
Copyright 2011 栃木子どもの本連絡会. All rights reserved.
|