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おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!



このコーナーでは、連続講座の講義の中で取り上げられた本を紹介いたします。
                
2016年の栃木子どもの本連続講座のテーマは「オーストラリア・ニュージーランドなどの子どもの本」です。このコーナーでは講義の中で取り上げられた本をごく一部ではありますが、紹介します。
                        




おすすめ本

2016年=オーストラリア・ニュージーランドなどの子どもの本=



題名  作者  訳者  出版社
カンガル-には、
    なぜふくろがあるのか 
ーアボリジナルのものがたー
 ジェ-ムズ・ヴァンス・マ-シャル再話   百々佑利子 岩波書店
   赤ちゃんを入れる袋を持つカンガル-、魚類だか鳥類だか分からないカモノハシ。砂漠や山に美しく咲くたくさんの花々。オ-ストラリアには珍しい動植物が多く存在します。
 オ-ストラリア大陸は、周りを海に囲まれており、アボリジナルと呼ばれる人々が自然とともに暮らし、動物や植物を大切にし、それらに興味を持ち、たくさんのお話しを作っては語り伝えてきました。
本書は、虹色の大蛇が大地を作った話、カンガル-やカモノハシの姿の由来や『死ぬ』事について生き物たちが悩む話など10の物語が収録されています。
 全編を彩るのは、ご自身もアボリジナルのヨ-タ・ヨ-タ部族出身の、ファイアブレイスさんのアボリジナル絵画です。生命そのものを捉えた力強い絵で魅了します。

ミセス・カッタ-と
       小人ニムビン

 パトリシア・
ライトソン
百々佑利子   岩波書店
   アボリジナルは600以上の部族にわかれ、使用言語も300~500もありました。互いに出会っても話が通じないことも多く、互いに異星人に遭遇したかのように感じました。そういう出会いが、地霊小人ニムビンやヘアリ-などの精霊伝説となって語り継がれてきました。地霊には父も母もありません。大地から生まれ、男である象徴として槍を持っており、女である象徴として草で編んだ袋を持っています。つまり精霊は男女を兼ねているのです。魔力を持った歌を知っていて遠くにいるものにでも歌で呼びかけます。
 物語の舞台は、タスマン海に面している大陸東海岸クィ-ンズランド州ブロ-ド及びクラレンス川です。オ-ストラリア原住民の伝説を踏まえた作品となっています。
 小動物や昆虫を意のままに操り動かす太古の精霊ニムビンとタッカ-おばあさんが、開拓小屋の所有権を巡って、あの手この手を駆使して対決します。
 1986年度アンデルセン賞受賞された作品です。

クシュラの奇跡 
         140冊の絵本との日々

 ドロシ-・バトラ- 百々佑利子    のら書店
   著者の次女パトリシアが20歳の学生でその夫が21歳の学生の時、生まれながらの染色体異常による重度の障害を持って生まれたのが孫のクシュラでした。
   クシュラは、眼球がふらつき、なかなか焦点を合わせることが出来ません。動くオモチャを目で追うことは困難でしたが、絵本のように動かない物は、時間をかけて焦点を合わせる事が出来ると、それに大きく反応しました。生後4ヶ月で絵本と出会い、3歳9ヶ月までに、140冊の本を、1冊に付き時には何百回も読んでもらうことで、文章や言葉を記憶し、日常生活で使えるようになりました。学校に行くようになると、書き言葉にも本で覚えた内容が出てくるようになりました。
   ドロシ-さんは、若い両親を助け子育て支援をしました。祖母、両親ともにクシュラの知能が発達する可能性を信じ、献身的な愛で接しました。
   パトリシアさんは、クシュラの成長記録を細かくつけていました。本書はその記録をドロシ-さんがまとめ、1984年に出版されました。
   

青木由紀子氏の講座
題名  作者  訳者  出版社
めざめれば魔女

 マーガレット・
マー
ヒー
 清水眞砂子 岩波書店
   14歳のローラは、母と3歳の弟と暮らす少女。独特の鋭い感受性があって、1年半ほど前に転校してきた上級生のソリー・カーライルが男でありながら魔女(ウィッチ)であると看破した。
   父親が家を出て行った時にも感じた前兆を今回も感じて不安になるが、その不安は弟のジャッコが雑貨店主を装った悪霊に取りつかれて生気を吸い取られるという事態となって的中する。ローラはカーライル家の魔女すなわちソリー、ソリーの母、祖母に助けを求めるが、ジャッコを救うためにはローラ自身が魔女にならなければならないといわれる。
 現代の普通の学校生活や家庭生活の中に、魔法の力が見え隠れする不思議な雰囲気を持つ小説だが、ここに出てくる魔法はよくあるような何でも思うがままに操れる物理的な力というよりは、非常にメンタルな、色や形や香りを生き生きと強く感じるような力として描かれている気がする。
   ローラが魔女に変身する過程も、子どもからおとなへというひとつながりの道、決して断絶してはいない重層的な世界へ踏み入っていくように描かれる。
 難病に侵されたジャッコを巡って、ローラの母ケートとその恋人、再婚した父親とその配偶者、ローラとソリー、現実的な人間関係が軽妙な会話と共にさまざまに読者の前に展開する。悪霊に打ち勝つ力を持ったローラだが、父、母、ソリーに対して怒り悩んだ挙句、悪霊の消滅と共に一種すがすがしい気持ちで思い切り、足を踏み出していくという青春小説である。
足音がやってくる
 マーガレット・
マーヒー
青木由紀子   岩波書店
   8歳のバーニーは感受性の強い、ごく普通の少年だった。ある日、幽霊のような男の子から、「バーナビーが死んだ! ぼくとってもさびしくなるよ」と告げられる。  そのバーナビー大叔父が死んだ日から、バーニーの周りには超自然的な現象が起こりはじめる。青い服をきた男の子が不意に現れたり、奇妙なささやき声が聞こえたりするようになる。そして、日ごとに近づいてくる正体不明の足音……。  バーニーに取り付いているのは悪霊か? 魔法か? 幻覚か? 青い服の男の子の正体は? 物語はどんどん緊迫感を増していく。
   継母のクレアや姉のタビサとトロイはバーニーを案じ、必死で守ろうとするが、不穏な気配は次第にバーニーの一家をパニック状態に追い込んでいく。  やがてバーニーの亡くなった実母の実家であるスカラー家の、恐るべき秘密が暴かれ、物語は思わぬ方向に展開していき、目が離せない。
   著者は、幽霊や魔法をミステリアスな現象として正面から扱っているのではない。現実世界の延長として取り込み、日常生活に融和させ、違和感を抱かせない。登場人物の感情や感覚を通して、その不思議さ、特異さ、怖さ、寂しさが語られ、読者に臨場感をもって迫ってくる。  魔法という特殊な能力を生かすことの難しさ、また特殊な能力や強い個性を有した子供をもつ家族のありかたや、家族がいたわり合い、守り合うことの大切さなど色々な角度からも考えさせられ、奥の深い家族の物語にもなっている。最後のクレアの「わたしたち、いっそう家族らしくなったわ」という言葉はほっとする。
   1982年の作品で、イギリスのカーネギー賞を受賞している
地下脈系
 マーガレット・
マーヒー
青木由紀子   岩波書店
   この物語の主人公は、眼鏡をかけたやせて小柄な男の子、トリス。彼はお母さんが家を出ていってしまって以来、お母さんの手紙を待ちながら、お父さんと二人で半島の端の家に住んでいます。庭園設計の仕事を家でしている、少し変わり者のお父さんのことは大好きだけれど、電気も引いていない、おやつもない家へ友達を招くのは恥ずかしい。そんなトリスの一番の仲よしは、空想上の勇敢な友達、「宇宙をまたにかける秘密捜査員」セルシー・ファイアボーン。二人で半島の隠れた小道や草むら、地下に広がるトンネルでわくわくする冒険をするのが日課です。最近、お父さんに好意を持つ女性、ヴィクトリアと、その小さな娘のロージーが現れて、彼の生活を変えられてしまうのではないかという不安を抱いています。しかし、本当に彼を大きく変えることになったのは、通学路の途中にある「ファンショー子どもの家」に新しくやってきた謎めいた女の子、ウィノーラとの出会いだったのです……。
「地下脈系」というタイトルで表現される地下に広がるトンネルのように、主人公のトリスは目の前の世界が見た目通りでないことをなんとなく感じています。ウィノーラとトリスが立ち向かうある事件を通じて、トリスはその見えていなかった世界、父親やヴィクトリアたち大人の違う一面、そしてウィノーラの本当の姿を知ることになります。複雑に張り巡らされた伏線が一つひとつ解き明かされていく過程はスリリングで驚きと発見に満ちていますが、トリスと同じような子どもの頃にこの物語に出会えていたら、もっと楽しむことができたかもしれないとも思います。
私たちになじみのある古典的な物語の主人公の型にはまらない、現代的な子どもの心象風景を知ることができる一冊だと思いました。また、この物語では『たのしい川べ』が幸せな子ども時代の象徴として印象的に何度も現れます。『たのしい川べ』を読んだことのある方にもおすすめです。



題名  作者  訳者  出版社
チュウチュウ通りの
    ゆかいななかまたち
          【全10巻】

 エミリー・
ロッダ
 さくまゆみこ あすなろ書店
   ハツカネズミのすむネコライン町には、チュウチュウ通りという通りがある。見返しには絵地図。ネズミ町の1番地から10番地に、それぞれ特徴のあるネズミが住んでいる。そのネズミたちが順々に主人公になって、物語が綴られていく。この通りでは、個性的なネズミたちが互いに助け合いながら、仲良く暮らしている。例えば1番地に住むのは、お宝チーズをいっぱい持ってる、お金持ちのお爺さんネズミのゴインキョ。2番地には古道具屋のクツカタッポ。3番地には子だくさんで大忙しの、お母さんネズミのフィーフィー。
 男性6人、女性4人のお話は、低学年向けだが、大人をも結構ハラハラさせ、大切なことを教えてくれる。幸せの形を改めて考えさせてくれる。絵本から読み物への橋渡しにおすすめの本です。                       
わたしは歌う 
      ミリアム・マケバ自伝

 ミリアム・マケバ/ジェームズ・ホール さくまゆみこ  福音館日曜日文庫
   40年くらい前に日本でも「パタパタ」の歌で有名になったミリアム・マケバでしたが、アメリカだけでなく世界中で歌手として成功し、ハリー・べラフォンテにも見い出されて、べラフォンテを「ビッグ・ブラザー(兄さん)」と呼ぶような関係にありました。また、出身は南アフリカで、ミリアムが子どもの頃、アパルトヘイト政策が始められました。国外にいったん出た後は、国に戻れず、何十年もの間アメリカで、またギニアの大統領の後援を受けてギニアで暮らし、国連で南アフリカの実情について何度も訴えたことなど、波乱に富んだ人生を送った人です。
 マーロン・ブランドやケネディ大統領にも愛されて、華やかなスター人生ですが、私的には3度の結婚、ガン、娘の精神的不安定や自殺といった次から次へと襲ってくる試練に会い、さらにビッグ・ブラザーとも行き違いから長い間疎遠になってしまうなど、分厚いこの本にも載せきれないほどたくさんの出来事があります。
 それでもミリアムには浮ついたところがなく、また人とのトラブルを自分に良いように捻じ曲げたり、相手を悪く言うことが不思議な程ないのです。素直で明るく、素朴といってもよいほどでありながら、包容力のある深い人柄が感じられます。
 この本は、ミリアム・マケバの語ったことをジェームズ・ホールが書き留めて本にしたものです。まさに「事実は小説よりも奇なり」を地で行った伝記です。  
いちばんのなかよし
ータンザニアのおはなし

 ジョン・キラカ さくまゆみこ  アートン
   動物村では、ネズミだけが火のおこし方を知っているので、とても大切にされていました。
動物たちは、毎日ネズミの所に行って火を分けてもらっていました。あるとき、雨が降らない日照が続き、大食いの象はそのうち飢饉がやってきて、飢え死にすると心配になり、一番の仲良しであるネズミさんが蓄えておいた米を騙し盗っていきます。仲良しだと信じていた象に大切な米を取られたネズミさんは、悲しくて泣きながら村から出ていきます。動物達は大切な火おこしのネズミさんの姿が見られなくなったので、象にネズミさんの居場所を聞きます。しかし仲良しであるはずの象は知らないと言う返事。象は皆から責められネズミさんの仕返しを恐れ始めます。
象は一番の仲良しとは?どんなに大変な時でも自分の事だけを考えたりしない!相手を慮ることであると、ネズミさんから教わります。
この作品は2005年のボローニャ国際児童図書展でラガッツイ賞受賞作。絵の中に登場する動物達が身につけているのはカンガという布でテーブルかけや巻きスカートなど、暮らしの中でいろんな物に用いられているようです。また生活の道具やゲーム盤も描かれタンザニアの人々の暮らしぶりや風土がわかって絵を見るのも楽しいです。読んでみて下さい。



題名  作者  訳者  出版社
おおきなカエルティダリク   -オーストラリア アボリジニ・ガナイ族のお話-

 加藤チャコ(再話)   福音館書店
   むかし、ティダリクという、どでかい、いわやまのようなカエルがすんでいました。
 あるとき、ティダリクが、大平原の水という水を、すっかりのみほしてしまったので、どうぶつたちは、のどがからから。そこでどうぶつたちは、みんなで知恵をしぼってティダリクに水をはきださせようとします。さて、その方法とは?
  オーストラリアの自然の中で暮らす作者の、ダイナミックでゆかいな絵から、アボリジニの生きる知恵が伝わってくる絵本です。                      
りんごろうくんのもりあるき
渡辺鉄太  アリス館
   朝ご飯を終えたりんごろうくんとお父さんは《もりあるき》に出かけます。
大きな木の洞やきれいな小川を見ても、折れた木をベンチにおやつを食べても、乗り気にならないりんごろうくん。でも、やぶの中の《くろいちごの甘くてすっぱいつぶつぶ》が口の中ではじけた後、りんごろうくんに思いがけない出会いが訪れます。
オーストラリアの豊かな自然を垣間見える一冊です。
やぎのアシヌーラどこいった?
   (こどものとも667号)
 渡辺鉄太  福音館書店
   スタマティスじいさんは、ものぐさで、庭の草取りをしたくない。そこでやぎを飼ってきれいに食べてもらった。そこへ農夫が通りかかり、自分のところのやぶも食べてもらいたいというので、ビールと引きかえに貸してやることに。やぶをきれいにすると、今度は羊飼いが農夫にやぎを貸してくれと言い、次に果樹園の男が羊飼いに貸してくれと言い、はてさて、やぎはどこに?
繰り返しが面白い一冊。






                            


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