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おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!


栃木子どもの本連続講座の今年のテーマは「ロシアの子どもの本」です。


このコーナーでは、連続講座の講義の中に取り上げられた本を、ごく一部ではありますが、講座の順に取り上げ、紹介していきます。
                        おすすめ本
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3:児島宏子氏の講座
4:伊東一郎氏の講座

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『きりのなかの はりねずみ』  
ノルシュティンとコズロフ /作
ヤルブーソワ/絵
児島宏子/訳
福音館書店



 夕方ハリネズミは友達のこぐまと星を数えたくて出かけます。
おみやげは、こぐまの大好きな野苺の蜂蜜煮。
途中で白い馬を見つけたハリネズミは霧の中に入って行きます。
ハリネズミは全感覚のアンテナをピンと立て、恐ろしいものや善意あるものに遭遇しながら、手探りで進んで行きます。
倒木に腰かけ星を数える2人の後姿に読み手はホッとする事でしょう。
友達と目的を共有し叶った時の喜びの心を捉えた詩情豊かな絵本です。
幼児から大人まで楽しめます。


『ワ―ニカ』  
アントン・P・チェーホフ/作
イリーナ・ザトゥロフスカヤ/絵
児島宏子/訳  
未知谷


チェーホフの短編がチェーホフ・コレクションとして、絵本になって出版されています。『ワ―ニカ』はそのうちの一冊です。日本ではチェーホフの「三人姉妹」や「桜の園」などの戯曲は有名ですが、短編はあまり知られていないようです。
 9歳の少年ワ―ニカは地主屋敷で掃除婦をしていた母親が死んだあと、モスクワの靴職人のところへ見習い奉公へ出されました。まだお屋敷で夜警をしているおじいちゃんにあてて、せつせつと辛い境遇を手紙に書きつづります。いじめられ、こきつかわれてこのままでは死んじゃう。一方田舎とは違うモスクワで見聞きしたことを興味しんしんで書きもします。〈大すきなおじいちゃん、おねがいだから、ボクをうちにつれかえってください〉クリスマスの前夜、親方たちが夜中のミサに出かけるのを待って、しわくちゃの紙切れを広げてすすり泣きながら書いているのです。というのもワ―ニカは、肉屋の店員たちが手紙はポストに入れれば酔っぱらった御者がどこまでも運んでくれるというのを聞いたからなのです。〈村のボクのおじいちゃんへ〉と宛先を書いたワ―ニカは、外套も着ないで通りに走っていき手紙をポストに入れました。ワ―ニカがあまい希望を抱いて眠りにおちるところで、話は終わります。せっかくのこの手紙はおじいちゃんのところへは届かないでしょう。稚拙とも思える挿絵がやり場のない悲しみを強調しているようでもあります。
 世界中で昔も今もこうした涙を流す子どもたちの事を思うと、胸が締め付けられる結末ですが、チェーホフのペンはワ―ニカを今目の前にいるように、いきいきと描きだしま
した。


エゴール少年
アントン・P・チェーホフ
エカテリーナ・ロシコーワ/絵
中村喜和/訳               
未知谷


これもチェーホフ・コレクションの中の一冊で、既訳は『曠野』として知られた中編ですが、抄訳絵本として非常に抑制された色彩の絵を添えて出版されています。モノクロに近い絵は、ロシアの大平原の単調な木や草や風景を淡々と綴っていきます。
 ワ―ニカと同じく9歳の少年エゴールは、中学校入学のため初めて母親から離れて、羊毛を売りに行く商人の伯父と共にバネなしのがたがたの馬車で、果てしない大地を旅していきます。母親の望みに従ったものの、エゴール当人は心細い思いを抱き、行けども行けども始まりも終わりもないような平原に圧倒されながらの初めての旅です。当時のロシアのふつうの人々の生活やありふれた出来事に、読者もエゴール少年の目をとおして次々に出会うわけです。現代の日本とは全く異なる風景の中を、一編の映画を見ているような感覚で読者も旅してゆく、そんな絵本になっています。






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