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おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!


栃木子どもの本連続講座の今年のテーマは「ロシアの子どもの本」です。


このコーナーでは、連続講座の講義の中に取り上げられた本を、ごく一部ではありますが、講座の順に取り上げ、紹介していきます。
                        おすすめ本
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3:児島宏子氏の講座
4:伊東一郎氏の講座

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ロシアのお話  『ハリネズミと金貨』
 V.オルロフ/原作 
田中 潔 /訳 V.オリシヴァング/絵
偕成社


冬間近の森の中、雨に打たれて金貨が濡れています。きらきら光る金貨が、ハリネズミのおじいさんの目に留まりました。
金貨を拾ったハリネズミ、その金貨で冬ごもりのための「干しキノコ」を買おうと、売っている場所を探します。声をかけてくれたリスが「キノコが欲しいならただであげるわよ」と干しキノコのいっぱい詰まった袋を投げてくれました。リスはその金貨はくつを買うのにつかうといいと教えてくれます。
 くつを探しに行ったハリネズミは、カラスにどんぐりのくつをただで作ってもらい、靴下はクモから、咳止めのはちみつは子グマから、と冬ごもりに必要なものは金貨を使わずにみんな森の仲間からもらいます。
 さて、手にしている金貨は‥‥。ハリネズミのおじいさんは、「だれかの役にたつかもしれんしな!」と、落ちていた場所に置きました。そして、満ち足りて冬ごもり。春になったら「また会おうね!」
 あれ、このお話何かに似ている、と感じるでしょうか。いや、こういうお話なら知っている、と思うでしょうか。が、ここにロシアの国民性が隠されているのかもしれません。講師曰く、困っている人がいたら自分のことを顧みずに手をさしのべてしまう人の好さを、かの国の人たちは持っている、とのこと。そんなロシアの国民性が表された絵本かもしれませんね。(もっとも、そんなこと考えずにただ物語を楽しんだ方がいいと思いますが)

 


『ワニになにがおこったか』  
M.マスクビナー/原作
田中潔 /訳  V.オリシヴァング/絵
偕成社


アフリカワニのガーパは、子ワニが生まれるのを楽しみに待っていましたが、生まれてきたのは鳥のヒナでした。さあ、たいへん!ワニの集団の中に鳥のヒナが混じっちゃった。
パパとなったガーパは、混乱から立ち直るとヒナを手探りで育て始めます。
エサは?飛び方は?そんなガーパの健闘にワニの仲間は冷たい視線。
 この絵本はいったいどのあたりが対象年齢なのだろう。大人だから大人の読み方をしてしまう。するとワニの世界の話なのに妙に人間っぽい。なんだか身につまされる。
成鳥になった鳥と空を泳いで旅だったワニのガーパは、今頃どこかにワニと鳥が一緒に暮らしていける場所を探し当てたのでしょうか?そんなことは心配せず、「幸せの国」へ旅立つ、ハッピーエンドと考えればいいのでしょうか?



『ごきぶり大王』  
K.チェコフスキー/作
田中潔 /訳  S.オストーロフ/絵
偕成社


コルネイ・イワーノビッチ・チュコフスキーは20世紀前半のロシアを代表する文学者、評論家、翻訳家、詩人です。特に児童文学の分野ではロシアの子どもたちから“シュードゥシカ(おじいさん)”と呼ばれて親しまれました。幼年向けの絵本では、詩形式の物語を得意とし、この『ごきぶり大王』もそのひとつです。
 クマのおやこがはしってく   ネコはゆったり ゴロゴロと   蚊のきょうだいは ふわふわと 
オオカミたちは 白い馬   ライオン一家は マイカーで   みんなわらってる はしってく 
そこへとつぜん あらわれた  茶色いヒゲの かいぶつが   ごきぶり王が あらわれた!
 さあ、たいへん!動物たちは大混乱。オオカミも、ワニも、ライオンも、あの大きなゾウまでもいちもくさんににげだした・・・。
発想が奇抜で、ナンセンスと空想にみちていて、とにかく楽しい。こどもの心理をよくつかんでいて、ユーモアの中にもハッとするような機智に富んでいて、幼児から幅広い年齢の子どもが楽しめる絵本です。韻をふんだ口調のよい語り口は、思わず声にだして読んでみたくなります。オストローフのダイナミックな絵もお話にマッチしていて、楽しめます。
『おおさわぎ』『フェドーラばあさん おおよわり』『あらうよバシャザブーン』『でんわ』
『ロシアのわらべうた』等、一連のチュコフスキーの絵本もお勧めです。


『ハリネズミくんと森のともだち』  
セルゲイ・G・コズロフ/作
田中潔 /訳  S.オストーロフ/絵
岩波書店


本書は、現代ロシアの人気児童文学作家、セルゲイ・G・コズロフによって1987年に描かれました。
 深い雪に埋もれていたロシアの大地も、がんこな冬じいさんが去ってしまうと、森は毎晩どしゃぶりの雨と雷。それも止むと春は一挙にやってくる。森は洗い立ての笑顔のように輝きはじめ、いっせいに花が咲き、小鳥たちの囀りが木の上からシャワーのように降りかかる。やがて白い霧にすっぽりと包まれる夏の夜。そして、短い秋はあっという間に走り去り、また激しい吹雪に閉じ込められる冬。
 そんな森に住むお人好しで空想好きのハリネズミくん。彼の周りには仲間がいっぱい。おちゃめな子グマ、慎重派のロバくん、怖がり屋のウサギ、リス、オオカミ等々。この本は彼らが繰り広げるちょっと変わった楽しいお話の数々です。
(ゾウにのって霧の夜を散歩する話)、(あまいニンジンの森にハチミツの雨がふる話)、(ハリネズミと子グマが星をみがいた話)等々、20余編の小話で成っています。
 最先端の文明に囲まれた今の子どもたちとは対極にある世界です。でも森に住む彼らの毎日が、会話のひとつひとつがなんと香しく、愛しく、生き生きと感じられることでしょうか。森の清浄な空気、降るような星のまたたき、白い霧の夢幻の世界が膚で感じられるようなお話です。小学生中学年にお勧めの本ですが、大人の読者にも心の〈みずうみ〉に静かに降りてくるような良書です。
 ユーリー・ノルシュティン監督の短編アニメ『霧につつまれたハリネズミ』はこの作品が原作になっています。



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