本文へジャンプ


おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!


                        おすすめ本
1
1
1
1
                          
1 1 1 1 1  1 1
『初版 グリム童話集1~5』  
 吉原高志・吉原素子 /訳
 白水社



 初版本の全訳はこれが初めてなので、グリム兄弟が童話集を世に出したその最初の姿を見ることができます。子どもに聞かせるにはふさわしくないとの理由でその後の版から取り除かれた話が入っています(原書第1巻22番、54番)。これらはこれまで日本の読者にはあまり知られていない話でしょう。一方、「ヘンゼルとグレーテル」や「白雪姫」の継母が、この初版本では実母であるということは比較的知られています。改訂を重ねるにつれ、童話集は繊細な描写が多くなり、文学性も高まりましたが、表現や描写の荒削りで大胆なところは失われていきました。この初版本では当初の素朴な口伝えの物語の魅力を味わうことができ、改訂版と比較しながら読むと、あらたな興味を呼び起こされます。


『灰色の畑と緑の畑』
 ウルズラ・ヴェルフェル /作
  野村泫 /訳
  岩波少年文庫 



 『火のくつと風のサンダル』で知られるヴェルヘルですが、1970年にこれまでとはまったく違ったこの作品を書きました。14編の短編からなり、作者もまえがきに書いているように、人間が一緒に生きることの難しさを語っています。それが読者に突きつけられ、そのままお話は閉じられる。読者は否応なしに深いショックを受けるが、考えて、考えて、やがてゆっくりと立ち上がり、何かをつかむ、何かを変えようとする力を与えてくれる作品です。
 きりりとしまった文体と、美しい翻訳で、一気に読者を引っ張って行きます。小学校高学年から大人まで、ぜひ手にとって欲しい傑作です。 



『少年の魔法の角笛 童唄之巻』
 アヒム・フォン・アルニム&クレーメンス・ブレンターノ/編
 吉原高志 
 白水社


『少年の魔法の角笛』はドイツの後期ロマン派の作家ブレンターノとアヒムによって、1806年に第1巻が出されました。口から口へ伝えられてきた民謡を集めて、初めて文字に定着させたものです。この民謡集は第3巻まであって、童謡は第3巻の付録として収められています。子守歌や遊びの歌、かぞえ歌、物語り風な歌、ナンセンスな歌などが含まれています。謎めいた小人が出てきたり、ふざけた笑える歌があったりで、当時のドイツの子ども達なら誰でも口ずさんでいたであろう楽しい歌ばかりです。
 この童謡集はやがてグリム兄弟が「グリム童話集」をつくるきっかけとなったともいわれています。
 このおすすめの本にはすべての歌が訳されていますが、岩波少年文庫から子ども向きに選ばれたものが出版されています。それぞれの訳で楽しむことができます。



ファービアン あるモラリストの物語』
 エーリヒ・ケストナー/作
 小松太郎 /訳
 ちくま文庫 



これはケストナーの大人の長編小説です。タバコ会社に勤める32歳のファービアンは、ヒットラー台頭の直前の退廃した時代に悶々とした日々をおくっていました。そんな中、突然の解雇、親友の自殺、恋人が女優になる為に身売りするなど、次々と不幸がおそいかかります。失意の心を抱いてベルリンから故郷のドレースデンに帰ったファービアンを待ち受けていたものは・・
 皮肉や揶揄が全体にちりばめられていますが、品の良いユーモアも随所に感じます。子どもの本では子ども達のほうが理性があり、大人は無秩序な存在で描かれていますが、ここでも大人に対する強烈な揶揄を感じます。又、ヨーロッパ大陸の危機の時代だとも書いていて、まさに現代にも通じる物語です。
 「ケストナーの子どもの本」の思い出をたくさんもっている人には、ぜひこちらも読んでみていただきたい傑作です。もちろん、ケストナーが初めての人にも。



Copyright 2011 栃木子どもの本連絡会. All rights reserved.