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おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!






子どもに読書のよろこびを
25年続いた栃子の中心事業「栃木子どもの本サマースクール」を終了するにあたり、形態を変えて会員に勉強の機会を残すことはできないだろうかという思いから、この連続講座が生まれました。
 2010年は「イギリスの子どもの本」、2011年は「北欧の子どもの本」、2012年は「ドイツの本」,2013年は「ロシアの本」,2014年は「フランス・ベルギー・オランダの本」2015年は「アメリカの本」のテーマのもと、県内外のたくさんの方々に受講して頂きました。
 そして、未来に向かって成長する子ども達を支え、本のつなぎ手として子どもの本をより深く学ぶために、今年も連続講座を開催いたします。
 2016年連続講座のテーマは

オーストラリアとニュージーランドなどのの子どもの本
です。



過去の連続講座のレポートをご覧いただけます。                         
 2015
アメリカの子どもの本
2014
仏・ベルギー・オランダの子どもの本
 2013
ロシアの子どもの本
2012
ドイツの子どもの本
 2011
北欧の子どもの本
2010
イギリスの子どもの本
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2016

オーストラリアとニュージーランドなどの子どもの本  

                                      



1  73() 午前の部:10:00〜12:00  午後の部:13:00〜15:00
        ※初回は、9:50から開会式をおこないます。

午前 オ−ストラリアとニュージンド
      先住民及び現代の作家が子どもに語る物講師

   

午後 パトリシア・ライトソンとドロシー・バトラ
      
伝承と創造 子どもたちと本の世界
   


講師 百々佑利子(もも ゆりこ
児童文学の研究と翻訳。オセアニア地域の部族伝承のフィールドワーク。1979年オーストラリア・ニュージーランド文学界の創設に関わる。神奈川大学教授、日本女子大学家政学部児童学科教授を務め、2009年に退任。2010年IBBY機関誌『Bookbird』初の多言語版『ブックバード日本語版』の初代編集長。訳書に『クシュラの奇跡 140冊の絵本との日々』(のら書店)『ムーン・ダークの戦い』(岩波書店)など多数。


講義中の百々佑利子
 
講座レポート


午前の部
「オ−ストラリアとニュ−ジ−ランド」
先住民及び現代の作家が子どもに語る物語


・オ−ストラリア大陸 先住民アボリジナル
 アボリジナルの人々は、四万年以上前アジアからオ−ストラリアに渡ってきました。数千と云われた部族が、独自の言語で話し、文字を持たなかったため、部族の掟や知恵を壁画に残し、物語にして語り継いできました。
 18世紀後半ヨ−ロッパ諸国はオ−ストラリア大陸へ植民地を求めやってきました。そこで、価値ある文化と自然環境を発見しました。大英帝国の支配下に置かれ文化の奪取、土地の略奪、先住民は人種差別など過酷な生活を強いられました。
1901年の独立したのちも国民として認めてもらえず、国民投票が行われた1967年にやっと市民権が与えられました。
 数千の部族がそれぞれ異なる風習や文化を持っています。共通しているのは、自然と調和して生きること。自然への畏敬の念を忘れずに暮らすことが本当の幸せをもたらすと云う考えです。文字も住居も持たないアボリジナルの人々は、狩猟を続けながら洞窟や岩陰を住みかとして移動生活をしていました。先祖から受け継がれてきた風習や文化は、「ドリ−ミング」(世界の始まり)と呼ばれる物語として今も伝えられています。

・ニュ−ジ−ランド 先住民マオリ

 マオリの先祖は、600年ぐらい前に南太平洋の大海原を、丸太をくりぬいたカヌ−で航海していた海洋民族です。航海者たちは、歌をうたい、物語を語りながら日ののぼる方角へこぎました。よりどころはポリネシアの島々に伝わる「クペ伝説」でした。 ニュ−ジ−ランドの国名の由来は、マオリ語のアオテアロア「白く長い雲のたなびく地」という意味で、元々は北島を示す言葉でした。
 マオリ族はポリネシアにあるという伝説の地ハワイキから渡ってきました。彼らの言語と伝統は、ニュ−ジ−ランドの文化の根幹をなしています。


午後の部
パトリシア・ライトソンとドロシ−・バトラ−」
伝承と創造、子どもたちと本の世界


・講師が長年にわたり交流を深めてきた、ドロシ−・バトラ−さん、パトリシア・ライトソンさんお二人についてご講話をいただきました。お二人とのお別れに心をいため、残念な思いを抱きつつのお話しでした。

・ドロシ−・バトラ−さん「読む人、書く人、売る人」
 作家、児童文学作家、児童文学評論家、元書店経営者の肩書きをもつバトラ−さんが経営していた書店は、今も彼女の功績をたたえ、ドロシ−・バトラ−の店と名を冠して運営されています。
ドロシ−さんは、自分の子どもたちが通う児童館の本棚を充実したいという願いから活動を始め、これが本屋の経営に繋がり、後に本格的な児童書専門店へと発展します。
 『クシュラの奇跡-140冊の絵本との日々』は余りに有名ですが、普及版も出版され、手軽に求められるようになりました。
 子どもの人生を豊かにする本の力を実証し、語り続けてきたバトラ−さんと親交を深められていた講師ならではのお話を拝聴しました。

・パトリシア・ライトソン「大自然の人」
 ライトソンの作品が、他のファンタジ−作家と違うのは、生まれ育ったオ−ストラリアの自然が物語のモチ−フになっているからだと思います。
オ−ストラリアの奥地の牧場で育ちラジオの通信教育を受けていました。大人になってから大都会シドニ−にやってきました。
 国際アンデルセン賞の受章式(渋谷青山こどもの城)に参列し、その後京都嵯峨野に行ったとき「竹取物語」の話を聞きました。竹の中に女の子が居るということに驚き、後に『ム−ン・ダ−クの戦い』(岩波書店)を執筆するようになったとのことです。
 成長・愛・死をテ−マにしたハイファンタジ−作品『氷の覇者』『水の誘い』『風の有志』(以上早川書房)や、アボリジナルの古い伝説を下敷きに、アボリジナルの部族の娘の物語『いにしえの少女バルイェット』(岩波書店))など興味深い作品を多く手がけています。





2  723() 午前の部:10:00〜12:00  午後の部:13:00〜15:00
        

午前 オーストラリア・ニュージーランドを含む英語圏のファンタジーについて
   

午後 マーガレット・マーヒーとその作品
   
   


講師 青木 由紀子(あおき ゆきこ)
・1954年東京生まれ。東京大学大学院比較文学比較文化博士課程修了。山形大学助教授を経て、現在和洋女子大学教授。児童文学、ファンタジーの翻訳・研究に取り組む。著書に『七つのテーマから読み解く英米児童文学』(ミネルヴァ書房)『指輪物語(シリーズ・もっと知りたい名作の世界)』(共著ミネルヴァ書房)、訳書に『贈り物は宇宙のカタログ』『地下脈系』(共にマーヒー作)『ファンタジーと言葉』(ル・グウィン作、岩波書店)など。
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                講義中の青木由紀子
 
講座レポート


午前の部
オーストラリア・ニュージーランドを含む英語圏のファンタジーについて

 オーストラリア・ニュージーランドはイギリス植民地としての特異な歴史があり、英語圏の児童文学は、19世紀イギリス帝国主義の影響を考察することなくしては語れないのだという、衝撃的な観点からのお話でした。私たち優れた児童文学を愛する者としては、ひたすらその黄金の子ども時代を象徴する世界に浸ってきたのですが、今回ポストコロニアル批評の存在を知り、今まで意識の上にはっきりとは浮かばなかった側面、あるいは故意に目を背けていた側面を知ることになりました。
 ポストコロニアル批評とは、第二次世界大戦後植民地が独立した時代、イギリスをはじめとするヨーロッパの宗主国と植民地の関係が両者の文化や文学にどのような影響を与えたかを反省的に振り返るという立場の文学批評です。
 この観点からイギリスの代表的動物ファンタジーのいくつかが取り上げられました。ラディヤード・キプリングの『ジャングル・ブック』、ケネス・グレーアム『たのしい川べ』、ヒュー・ロフティング『ドリトル先生アフリカゆき』、A・A・ミルン『くまのプーさん』『プー横丁にたった家』、マイケル・ボンド『くまのパディントン』、マージェリー・シャープ『くらやみ城の冒険』、そしてオーストラリアの作家パトリシア・ライトソンの『ムーン・ダークの戦い』。これらの作品に出てくる動物たち、あるいは人間たちはいくつかのタイプや種類に分類することができます。そしてそれが、動物という形やぬいぐるみという姿をとることによって、あからさまな人間世界の力関係は隠されている、あるいはやわらげられてはいるものの、白人至上主義的なものが見え隠れしているというのです。先生いわく、児童文学そのものが優位にあるおとなが一方的に子どもに与えるものであるがゆえに、こどもを植民地として支配する帝国主義的なものであるとも!
 異論のある方もおいででしょうが、今まで考えてこともなかった視点を与えられたことは確かでした。先生もその点はご理解の上で、イギリスの児童文学作家J・R・タウンゼンドの言葉を引用していらっしゃいます。「ロフティングの時代のイギリス人の多くは、外国人だと見ればみんなこっけいだと思い、ましてや皮膚の色のちがう外国人ともなれば、二重にこっけいだと思っていたわけだが・・・ロフティングが、そのイギリス人の無神経さを共有していたのだということは、今日ではわかりすぎるほどよくわかっている。・・・この誠実で善意の人に悪意などあるはずもなかったのだから、わたしはロフティングがやがて許してもらえることを願っている」
 批判的に見る視点を保ちつつ作品世界を愛し楽しみたいと思わされた講座でした。 



午後の部

マーガレット・マーヒーとその作品

 

 ニュージーランドを代表する児童文学作家であるマーガレット・マーヒーは、図書館員としての勤務経験が長かったので、その作品にはいろいろなところで図書館員が顔を出すのだそうで、そこがほほえましくも面白いところです。多数の子ども向き、ヤングアダルト向きの作品がありますが、今回、その作品群に切り込む視点は「インターテクスチュアリティー」という概念でした。

インターテクスチュアリティーとは、「あらゆるテクスト(作品)は複数のテクストが交錯することによって創りだされる」ということ。すなわち作者自身の中にも、これまでの読書経験によっていろいろなテクストが流れ込んでいるのですが、それを読む読者の側もこれまで蓄積したテクストと照らし合わせてそれを理解し、鑑賞するということです。

マーヒーはこのインターテクスチュアリティーを非常に意識していた作家といえます。その作品の中には、多数の文学作品がその題名や一部の引用という形で出てきます。先生は、マーヒーが1989年来日した折の講演で次のように言っていることを紹介されました。

「このことでわたしはいかなる物語も単独では存在しないのだと認識させられました。物語というものはネットワークの一部であり、そのネットワークは世界中に広がっているのです。ネットワークの一部は特定の国に属しているかもしれませんが、物語は海を越え、大陸を超えてつながりあい、作家は当然独創的でありたいと願いますが、このネットワークの一部であることを避けることはかなわないのです」この世界的なネットワークこそがインターテクスチュアリティーということなのです。

このインターテクスチュアリティーの概念によってマーヒーの3作品『めざめれば魔女』『地下脈系』『クリスマスの魔術師』が読み解かれました。引用された言葉によって、過去の物語のイメージが重層的に表れ、あるいは誰でも知っている物語を並べていくことであらたな意味が付加されるという刺激的な読み方が紹介されました。これも、今までになく新鮮な体験だったといえましょう。





3  828() 午前の部:10:00〜12:00  午後の部:13:00〜15:00
        

午前 私が訳したオーストラリアの作家たち
   

午後 アフリカの子どもの本
   


講師 さくまゆみこ
・東京生まれ。元青山学院女子短期大学子ども学科教授。翻訳家。アフリカ子どもの本プロジェクト代表。『もうひとつの『アンネの日記』』(ゴールド/講談社)で参詣児童出版文化賞大賞受賞。翻訳書に『ローワンと白い魔物』を始めとするシリーズ、「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」シリーズ(以上エミリー・ロッダ/あすなろ書房)他多数。著書に『エンザロ村のかまど』(福音館書店)『どうしてアフリカ?どうして図書館?』(あかね書房)他


講義中のさくまゆみこ氏

 講座レポート

 
午前
私が訳したオーストラリアの作家たち

さくまゆみこさんが訳されたオーストラリアの3人の作家、エミリー・ロッダ、ジャッキー・フレンチ、ジーニー・ベイカーとその作品について話してくださいました。
娘さんが高校生の時、交換留学でオーストラリアにいらしたそうです。その小さな町の本屋さんでさくまさんが「今、子どもたちが夢中になっている本は何?」と聞いて紹介されたのが「リンの谷のローワン」(あすなろ書房)だったそうで、それがエミリー・ロッダの作品との最初の出会いでした。
エミリー・ロッダは本名ではなく、ロッダの祖母の名前だそうです。最初の本を出版した時、ロッダは出版社に勤務していて本名では出せないのでこの名前を使ったのが、定着したとか。オーストラリア児童文学賞を史上最多の5回受賞しています。
さくまさんは、「子どもの本は子どもの周りにある窓だ」と。何も窓が開かないような本ならなくていい。残念ながらそういう本も結構ある、と。
ローワンのシリーズでは、◎力や頭脳だけでは問題は解決できないこと ◎登場人物の村長や同行者に女性が多く、男女がステレオタイプでない ◎強い人にも弱点があり、むしろ弱い人がそれを補っている、などの特徴があります。さくまさんが各巻の物語を語ってくださると、すぐにも読みたくなってしまいます。
また同じロッダの「チュウチュウ通りのなかまたち」(あすなろ書房)のシリーズは、幼年童話で、絵本から読み物への橋渡しとして、適当な本です。ロッダは体裁はエンターテインメントでも、子どもたちにどんな世界を手渡したらいいかをちゃんと心得ている作家だと話されていました。またこの日本語版の表紙絵は国際的にも「いいね」と評価されているそうです。
『ヒットラーのむすめ』(鈴木出版)を書いたジャッキー・フレンチは、14歳の時に出たドイツ語の宿題をきっかけに、ナチス時代の14歳の少年の話を聞いた。両親ともナチの党員で、少年もユーゲント。ヒットラーに逆らうものは抹殺すべきだと言われ、それを信じていた。14歳の子どもの周りが狂っていたら、どうして何が正しく何が正しくないかを判断できるだろうか、と。今の子どもたちはこの本をファンタジーと同じように自分とは違う世界の話として読むだろうが、想像させるきっかけになるのではないか、と話されました。
ジーニー・ベイカーは映画作りやデザイン、絵本作りに携わる環境問題にも関心の高い人で、コラージュを使った作品を作っています。『MIRROR』でオーストラリア最優秀絵本賞を受賞しています。『MIRROR』『HOME』はともに非常に美しい絵本ですが、周りの環境に子どもたちの目を向けさせたいという思いで作られています。


午後
アフリカの子どもの本

アフリカには、子どもの本を出版している国が少なく、教科書だけという所もあるそうです。それはもともと口承文芸が盛んだった地域が多いことや、植民地だったため、1つの民族が多くの国に分かれている分断国家であることも理由です。例えばナイジェリアだけでも250〜300以上の言語が使われていると言われています。
 それでも、さくまさんが訳されたアフリカ人作家の本、アフリカが舞台になっている作品、アフリカ系アメリカ人の作品のリストは膨大です。
まず日本で出版されているアフリカ人作家・画家とその作品について話してくださいました。『いちばんのなかよし』(アートン)、『チンパンジーとさかなどろぼう』(岩波書店)」の作者ジョン・キラカ、『ゴリラとあかいぼうし』(福音館書店)の画家ダヴィッド・ビシームワ、『おじさんのブッシュタクシー』(アートン)の作者クリスチャン・エパンニャなどなどです。また『おばあちゃんにおみやげを』『AはアフリカのA』(偕成社)など多くの写真絵本を著しているイフェオマ・オニェフルはイギリス在住で、お子さんたちがアフリカの生活を知らないので、写真を撮ってアフリカの生活を紹介したということです。
また『岩をたたくウサギ』(新日本出版社)などに登場するウサギは、アフリカでは昔話によく出てくるトリックスターで、いい面悪い面の両面を持っており、秩序をひっくり返す役割を持つ存在として登場するそうです。日本ではだましたら罰を受けるというのが一般的ですが、アフリカのノウサギは最後まで逃げおおせるのだそうです。
 ほかにもカマラ・ライエ著『アフリカの子』(偕成社)、ジョゼフ・レマソライ・レクトン著『ぼくはマサイ』(さ・え・ら書房)、オオスマン・サンコン著『サンコン少年のアフリカ物語』(講談社)、ウィリアム・カムクワンバ著『風をつかまえたウィリアム』(さ・え・ら書房)ほかは自伝だったり、ノンフィクションで、アフリカの生活がよくわかるものです。
 またグリオというアフリカの語り部・楽師の伝統についてもお話くださいました。グリオは世襲制で、この呼び名はフランス人たちが総称して呼んだもので、地域ごとに実際の呼び名は違うということですが、昔話や歴史などを親たちから聞いて育った人たちだそうです。いろいろな物語の中にも登場してきます。
 一般にアフリカの本は私たちにはなじみの薄いものですが、さくまさんのお話を聞いていると、アフリカの世界に思いをはせて、あっという間の時間でした。





4  9月3() 午前の部:10:00〜12:00  午後の部:13:00〜15:00
        

午前 オーストラリアの環境と子どもの本
   
午後 文庫の子ども達と読んだオーストラリアの本


講師 渡辺 鉄太(わたなべ てつた)
・1962年生まれ。大学勤務を経て、子どもの本についての著述と翻訳に専念している。異文化社会での子育てについて『緑の森のバイリンガル』(三修社)、児童文学の翻訳には『クマと仙人』(父・渡辺茂男と共訳、のら書店)、「としょかんねずみ」シリーズ(1から5巻、瑞雲舎)、創作には『コアラのクリスマス』(福音館書店)などがある。「メルボルンこども文庫」主宰。オーストラリア・メルボルン近郊のダンデノン山在住。


講義中の渡辺鉄太氏

 講座レポート

 
午前
オーストラリアの環境と子どもの本

 言語学を専攻し、オーストラリアでは日本語教師をしました。メルボルン子ども文庫を始めてから16年になります。メルボルンでは30%くらいの人が英語以外の言語で生活しています。
2年前にオーストラリアの新聞が好きな子どもの本トップ50を調査しました。
 1位『Possum Magic』2位『ハリーポッターの賢者の石』3位『はらぺこあおむし』4位『さよならを待つために』・・・などでオーストラリア、イギリス、アメリカの子どもの本が2:2:1の割合で、英語圏の本が多く、アボリジナルの本は入りません。また新しい作家も入りません。アジア、アフリカの本も見かけることはなく、英語圏以外の本には興味がなく、英語圏以外の本の翻訳を排除している傾向があると思います。また、嫌いな本トップ〇〇の調査もあります。
 かつては、学校でオーストラリアの歴史を学ぶ時は、イギリスの歴史から入りましたが、何年か前からイギリスの歴史よりもアボリジナルの歴史を学ぼうとする動きが出てきました。また最近は中国系やインド系の人たちが多くなってきて、その歴史を学ぼうという傾向もあります。オーストラリアはいずれ英連邦から独立するだろうと思いますが、1970年までは白豪主義で、白人以外の移民は入れなかったのです。現在のオーストラリア人は多民族国家であることを受け入れて暮らすようになっています。
 1900年頃からアボリジナルを保護する運動も始まったのですが、白人とアボリジナルの混血の子は、アボリジナルとも区別され、親元から引き離されて寄宿舎に入れられ、キリスト教や西洋風の教育を受けさせるという法律がありました。1960年代まで続いた法律です。また1960年代までアボリジニは選挙権がなかったのです。この混血の子たちは自分の親を知らずに育ち、ストーレンジェネレーションと呼ばれました。このことを描いた本に『STOLEN GIRL』(ノーマ・マクドナルド)という絵本、『裸足の1500マイル』(ドリス・ピルキングトン/メディア・ファクトリー)などがあります。

午後
文庫の子ど達と読んだオーストラリアの本

1996年にオーストラリアに移住しました。メルボルンの東のダンデノン山に住んで15年です。
オーストラリアの図書館は充実していますが、日本人はあまりまとまって住んでいないので、図書館によって日本語の本がある所とない所があります。日本語というと「勉強」というイメージになってしまうようです。
 自分の子どもたちには、ルーツである日本語や日本文化を伝えていくよう日本の本を読んでやるようにしてきました。その中で、文庫を作ろうと立ち上げたのが「メルボルン子ども文庫」です。月1回の開催で、大体10家族くらいがやってきます。日本では考えられないくらいの距離を運転してやってくる家族もいます。年に1回は2泊3日のキャンプをしています。文庫の仲間にはいろいろな特技を持つ人がいて、それぞれの能力を発揮してくれています。妻の加藤チャコの『おおきなカエル ティダリク』(福音館書店)はビクトリア州ガナイ族の昔話で、文庫でも人気の絵本です。『Peggy』(Anne Walker)はニワトリがメルボルンの街の中で迷子になるお話です。
 また加藤チャコとの共著に『ポッサムおちた』(こどものとも年少版)、『やぎのアシヌーラどこいった?』(こどものとも)があります。息子のりんごろうを主人公にした話『りんごろうくんのもりあるき』(アリス館)もあります。





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