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第1回 7月3日(日) 午前の部:10:00〜12:00 午後の部:13:00〜15:00 ※初回は、9:50から開会式をおこないます。
午前 オ−ストラリアとニュージンド 先住民及び現代の作家が子どもに語る物講師 午後 パトリシア・ライトソンとドロシー・バトラ 伝承と創造 子どもたちと本の世界 講師 百々佑利子(もも ゆりこ)氏 ・児童文学の研究と翻訳。オセアニア地域の部族伝承のフィールドワーク。1979年オーストラリア・ニュージーランド文学界の創設に関わる。神奈川大学教授、日本女子大学家政学部児童学科教授を務め、2009年に退任。2010年IBBY機関誌『Bookbird』初の多言語版『ブックバード日本語版』の初代編集長。訳書に『クシュラの奇跡 140冊の絵本との日々』(のら書店)『ムーン・ダークの戦い』(岩波書店)など多数。
講義中の百々佑利子氏 講座レポート
・ニュ−ジ−ランド 先住民マオリ
マオリの先祖は、600年ぐらい前に南太平洋の大海原を、丸太をくりぬいたカヌ−で航海していた海洋民族です。航海者たちは、歌をうたい、物語を語りながら日ののぼる方角へこぎました。よりどころはポリネシアの島々に伝わる「クペ伝説」でした。 ニュ−ジ−ランドの国名の由来は、マオリ語のアオテアロア「白く長い雲のたなびく地」という意味で、元々は北島を示す言葉でした。 マオリ族はポリネシアにあるという伝説の地ハワイキから渡ってきました。彼らの言語と伝統は、ニュ−ジ−ランドの文化の根幹をなしています。 午後の部 パトリシア・ライトソンとドロシ−・バトラ−」 伝承と創造、子どもたちと本の世界 ・講師が長年にわたり交流を深めてきた、ドロシ−・バトラ−さん、パトリシア・ライトソンさんお二人についてご講話をいただきました。お二人とのお別れに心をいため、残念な思いを抱きつつのお話しでした。 ・ドロシ−・バトラ−さん「読む人、書く人、売る人」 作家、児童文学作家、児童文学評論家、元書店経営者の肩書きをもつバトラ−さんが経営していた書店は、今も彼女の功績をたたえ、ドロシ−・バトラ−の店と名を冠して運営されています。 ドロシ−さんは、自分の子どもたちが通う児童館の本棚を充実したいという願いから活動を始め、これが本屋の経営に繋がり、後に本格的な児童書専門店へと発展します。 『クシュラの奇跡-140冊の絵本との日々』は余りに有名ですが、普及版も出版され、手軽に求められるようになりました。 子どもの人生を豊かにする本の力を実証し、語り続けてきたバトラ−さんと親交を深められていた講師ならではのお話を拝聴しました。 ・パトリシア・ライトソン「大自然の人」 ライトソンの作品が、他のファンタジ−作家と違うのは、生まれ育ったオ−ストラリアの自然が物語のモチ−フになっているからだと思います。 オ−ストラリアの奥地の牧場で育ちラジオの通信教育を受けていました。大人になってから大都会シドニ−にやってきました。 国際アンデルセン賞の受章式(渋谷青山こどもの城)に参列し、その後京都嵯峨野に行ったとき「竹取物語」の話を聞きました。竹の中に女の子が居るということに驚き、後に『ム−ン・ダ−クの戦い』(岩波書店)を執筆するようになったとのことです。 成長・愛・死をテ−マにしたハイファンタジ−作品『氷の覇者』『水の誘い』『風の有志』(以上早川書房)や、アボリジナルの古い伝説を下敷きに、アボリジナルの部族の娘の物語『いにしえの少女バルイェット』(岩波書店))など興味深い作品を多く手がけています。
午前 オーストラリア・ニュージーランドを含む英語圏のファンタジーについて 午後 マーガレット・マーヒーとその作品 講師 青木 由紀子(あおき ゆきこ)氏 ・1954年東京生まれ。東京大学大学院比較文学比較文化博士課程修了。山形大学助教授を経て、現在和洋女子大学教授。児童文学、ファンタジーの翻訳・研究に取り組む。著書に『七つのテーマから読み解く英米児童文学』(ミネルヴァ書房)『指輪物語(シリーズ・もっと知りたい名作の世界)』(共著ミネルヴァ書房)、訳書に『贈り物は宇宙のカタログ』『地下脈系』(共にマーヒー作)『ファンタジーと言葉』(ル・グウィン作、岩波書店)など。 ´ 講義中の青木由紀子氏 講座レポート
マーガレット・マーヒーとその作品
ニュージーランドを代表する児童文学作家であるマーガレット・マーヒーは、図書館員としての勤務経験が長かったので、その作品にはいろいろなところで図書館員が顔を出すのだそうで、そこがほほえましくも面白いところです。多数の子ども向き、ヤングアダルト向きの作品がありますが、今回、その作品群に切り込む視点は「インターテクスチュアリティー」という概念でした。
インターテクスチュアリティーとは、「あらゆるテクスト(作品)は複数のテクストが交錯することによって創りだされる」ということ。すなわち作者自身の中にも、これまでの読書経験によっていろいろなテクストが流れ込んでいるのですが、それを読む読者の側もこれまで蓄積したテクストと照らし合わせてそれを理解し、鑑賞するということです。
マーヒーはこのインターテクスチュアリティーを非常に意識していた作家といえます。その作品の中には、多数の文学作品がその題名や一部の引用という形で出てきます。先生は、マーヒーが1989年来日した折の講演で次のように言っていることを紹介されました。
「このことでわたしはいかなる物語も単独では存在しないのだと認識させられました。物語というものはネットワークの一部であり、そのネットワークは世界中に広がっているのです。ネットワークの一部は特定の国に属しているかもしれませんが、物語は海を越え、大陸を超えてつながりあい、作家は当然独創的でありたいと願いますが、このネットワークの一部であることを避けることはかなわないのです」この世界的なネットワークこそがインターテクスチュアリティーということなのです。
このインターテクスチュアリティーの概念によってマーヒーの3作品『めざめれば魔女』『地下脈系』『クリスマスの魔術師』が読み解かれました。引用された言葉によって、過去の物語のイメージが重層的に表れ、あるいは誰でも知っている物語を並べていくことであらたな意味が付加されるという刺激的な読み方が紹介されました。これも、今までになく新鮮な体験だったといえましょう。
第3回 8月28日(日) 午前の部:10:00〜12:00 午後の部:13:00〜15:00
午前 私が訳したオーストラリアの作家たち 午後 アフリカの子どもの本 講師 さくまゆみこ氏 ・東京生まれ。元青山学院女子短期大学子ども学科教授。翻訳家。アフリカ子どもの本プロジェクト代表。『もうひとつの『アンネの日記』』(ゴールド/講談社)で参詣児童出版文化賞大賞受賞。翻訳書に『ローワンと白い魔物』を始めとするシリーズ、「チュウチュウ通りのゆかいななかまたち」シリーズ(以上エミリー・ロッダ/あすなろ書房)他多数。著書に『エンザロ村のかまど』(福音館書店)『どうしてアフリカ?どうして図書館?』(あかね書房)他
講義中のさくまゆみこ氏
講座レポート
第4回 9月3日(土) 午前の部:10:00〜12:00 午後の部:13:00〜15:00
午前 オーストラリアの環境と子どもの本 午後 文庫の子ども達と読んだオーストラリアの本 講師 渡辺 鉄太(わたなべ てつた)氏 ・1962年生まれ。大学勤務を経て、子どもの本についての著述と翻訳に専念している。異文化社会での子育てについて『緑の森のバイリンガル』(三修社)、児童文学の翻訳には『クマと仙人』(父・渡辺茂男と共訳、のら書店)、「としょかんねずみ」シリーズ(1から5巻、瑞雲舎)、創作には『コアラのクリスマス』(福音館書店)などがある。「メルボルンこども文庫」主宰。オーストラリア・メルボルン近郊のダンデノン山在住。
講義中の渡辺鉄太氏
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