 

栃木子どもの本連絡会は、
未来に向かって成長する子ども達を支え、
本のつなぎ手として子どもの本をより深く学ぶために、
過去様々な講座を開催してきました。
1995年から2009年まで25年に渡り、
「栃木子どもの本サマースクール」が開催されました。
※アーカイブ参照のこと
その後、形態を変えて会員に勉強の機会を
残すことはできないだろうかという思いから、
2010年「栃木子どもの本連続講座」が生まれました。
第1回「イギリスの子どもの本」から始まり、
2022年に開催された第10回「日本の子どもの本」まで、
そうそうたる講師陣をお迎えすることで、
県内外のたくさんの方々に受講して頂きました。
その多彩なテーマもこちらでご覧いただけます。
※栃木子どもの本連続講座参照のこと
そして、
さらなる学びの機会を提供したいという思いから,
2023年よりあらたに
「栃木子どもの本の講座」を開催いたします。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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子どもの本の講座のほかの年のレポートをご覧になれます。



第1回 6月7日(土) 午前の部:10:00~12:00 午後の部:13:00~15:00
※初回は、9:50から開会式をおこないます。
午前
私の経験した子どもの図書館
午後
講師 斎藤 惇夫(さいとう あつお)氏
・1940年新潟市生。立教大学法学部卒。福音館書店で子どもの本の編集に長く携わったのち、2000年より作家活動に専念。2007年より河合隼雄氏を継いで『児童文学ファンタ
ジー大賞』選考委員長。2017年より麗和幼稚園園長。ライフワークとして、講演や著作を通して、子どもの本のあゆみ、子どもたちに本を読んでやることの大切さ、選書の大切
さを訴える活動を続けている。著書に『グリックの冒険』『冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間』『ガンバとカワウソの冒険』『哲夫の春休み』(以上岩波書店)ほか。

斎藤 惇夫さん
講座レポート
午前の部
・斎藤さんは、自分の子どもの本に対する想いや考え方の基本を作ってくれた、児童図書館・異なる種類の規模の4つの図書館を選んでお話ししてくださいました。
その1つ目は、斎藤さんが通った新潟大付属長岡小学校の学校図書館です。そこの学校司書は、斎藤さんが読みたい本を言う前に与えてくれた。無意識に求めていた物語、あるいは人間の心と世界を感知させて、それに心の中の宇宙を感知させる本を的確にいつも手渡してくれた。その人の力を借りて本を選ぶ、借りる、読む。その当たり前の行為の尽きせぬ喜びの経験をさせてもらった、と。
2つ目は、新潟市公共図書館と学校図書館です。斎藤さんは、1970年代にその研修会に招かれ、そこで出会った若い図書館員たちに驚いたそうです。石井桃子さんが提唱していた図書館というものを、新潟の図書館員がすでに始めていたからです。さらに、そのころ新潟市の各小中高校では、専門の司書が配置されていたそうです。以後斎藤さんは、仕事で行った場所、たとえ海外でも、まず図書館に行くようになった、と。図書館を覗き、棚に並んでいる本を眺め、図書館員と少しお話をし、カウンターでの図書館員と子どもたちの話に耳を澄ませれば、その地域の子どもと未来に対する思いがわかる、と。
3つ目は、小学校時代の恩師の家庭文庫です。恩師が選び子どもたちに読んで、貸し出している本の質の高さに、それを喜んで借りている子どもたちを見て、子どもと未来を向き合うということの厳しさや優しさや激しさ、それを実感したそうです。
4つ目は、カナダのトロント図書館。そこに勤める司書として最初の、そして、最も大きな大切な仕事は「子どもの本を選ぶ」ということ。図書館というものが、人間の文化を、視野を、真実を、子どもたちを守る仕事をしている、子どもと未来を守る砦になっている、と強く認識した。このカナダの図書館の経験で、編集者としての在り方と、子どもと未来の在り方を具体的に教わった、と。
午後の部
・午後の部では、午前の部の図書館についてさらに詳しくお話しされました。
その中で、特に小学校の時の恩師原先生は、クローバー畑に子どもたちを座らせて、宮澤賢治や世界中の昔話を読んでくれた。岩波少年文庫が発売されると、少年文庫を次から次へと読んでくれる、ということを繰り返ししてくださった。85歳になった今、クラス会に行くと、みんな自分の好きだった物語を挙げることができるのです。そしてみんな違うタイプの本を挙げるのです。それがいいなあと思います。
また、リリアン・スミスの『児童文学論』を引用されて、「たしかに子どもたちは楽しみのために本を読む。しかし、無意識のうちに、そこに永続的な真実があることを求めている。かれらは、不朽の値打ちのある本にだけ、成長に必要な材料を見出すことができる。すぐれた子どもの本は、それを読む子どもたちに、非常用の錨を荒い波風におろすような安定感を与える」と。
物語作家と詩人と絵描きがいれば、子どもの本が生まれる、ということではありません。子どもたちとの間に立って、子どもと未来のために企画を立て、著者に依頼し、彼らの原稿を読んでチェックし、それを本にする編集者が必要です。それから、その本をより子どもたちのそばに身を置きながら、子どもと未来のためにチェックし、選び、一人一人に手渡し、そしてその本を守り通す、専門の図書館員たちが必要なのです、と。
また、カナダのトロント図書館での経験として、図書館員たちが「ナルニア国物語」を書架に並べるかどうかを6年間議論しつくしたと聞いたことを上げ、図書館員たちは本気で本を選び、本を守り続けている、と図書館員たちの大切な仕事について語られました。斎藤さんの子どもの本に対する並々ならぬ思いを感じた午前午後の講義でした。
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第2回 7月26日(土) 午前の部:10:00~12:00 午後の部:13:00~15:00
午前
絵本の扉の向こう側~絵本誕生秘話
午後 まどさんのこと・科学絵本のこと~
講師 松田 素子(まつだもとこ)氏

松田 素子さん
講座レポート
午前の部
・編集者として300冊以上もの本を生み出してきた松田素子さん。意外にも、初めて絵本に出会ったのは21歳の時で、子どもの頃はたった1冊の絵本も見たことがなかったそうです。が、その初めての絵本が深く心に響き、また程なく宮沢賢治の文学にも出会い、目の前の世界が、ガラリと変わってしまったと熱く語られました。ただ、この頃はまだ、ご自身が本の世界へいくことになるとは想像もしていなかったそうです。
松田さんはご自身を「本のお産婆さん」と表現され、数々の絵本誕生秘話をお話しくださいました。まさに絵本の扉の向こう側には、想像を超えたあらゆるドラマがありました。会場は笑いが起きたり、静寂に包まれたり、時には涙する姿も見られ受講者の方々は、松田さんのお話に魅了されていました。なかでも、数多く編集された宮沢賢治の絵本誕生秘話は、生き方や深層心理に迫る奥深いお話が満載でした。
松田さんは、「全ての本の裏側には色々な物語があり、作品は作家の奥深いところからやってくる。編集者はそれにどこまで気づけるか、力を試される」とおっしゃって、絵本に携わる方々への敬意や編集者の誇りが伝わってきました。また、本に込めた思いは、種をまくようにコツコツと伝えていかなければと、そして伝え続けていくことが松田さんの夢であり、夢は見るものではなく掴むもの「夢は握力」という松田さんの言葉がとても心に響きました。
午後の部
・午前の絵本誕生秘話も盛り沢山の内容でしたが、まどみちおさんのお話と科学絵本のお話も興味深くて時間があっという間に過ぎていきました。まどさんのお話から始まりましたが、松田さんから、まどさんへの敬愛が伝わってくるエピソードばかりでした。まどさんは、あらゆることに着眼しておられて、100歳の時に1年で100枚の絵や詩を遺され、松田さんは、自分は何も見えてないと思わせられることばかりだったそうです。また、まどさんの意外にお茶目な一面や、まどさんの詩が、東日本大震災で被災した子どもたちの心に届いたエピソード、まどさんの人生についてもお話しくださいました。さらに、ご自身が編集されたまどさんの詩の絵本の朗読や、生前のまどさんの肉声も聞かせてくださいました。松田さんは、「まどさんと出会えたことは、私の宝」と仰って、まどさんの「私は、絶望することができなかった」という言葉が、今も松田さんの心にこだましているそうです。科学絵本のお話では、執筆者としてのお話も聞かせてくださいました。ホネの本や、宇宙の本などの誕生には、数々の紆余曲折のお話がありました。松田さんは、科学絵本で伝えたいのは、知識ではなく、今ここにいる、生きているということなのだと仰っていました。そして、子どもに伝えるためには、子どもに真剣に向き合って本気の球を投げるように、科学の本も徹底的に検証、分析し時間をかけて本気でつくりあげたものを子どもたちに届けていきたいとお話しくださいました。松田さんの執筆者として子どもたちに真摯に向き合う姿に、胸が熱くなりました。
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