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栃木子どもの 本の講座

 


 


おすすめ本です!
のぞいてみて下さい!







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子どもに読書のよろこびを

25年続いた栃子の中心事業「栃木子どもの本サマースクール」を終了するにあたり、形態を変えて会員に勉強の機会を残すことはできないだろうかという思いから、この連続講座が生まれました。
 2010年は「イギリスの子どもの本」、2011年は「北欧の子どもの本」、2012年は「ドイツの子どもの本」,2013年は「ロシアの子どもの本」,2014年は「フランス・ベルギー・オランダの子どもの本」2015年は「アメリカの子どもの本」、2016年は「オーストラリア・ニュージーランドなどの子どもの本」、2017年は「アジアの子どもの本」、2018年は「東欧・南欧の子どもの本」,2019年は「子どもの本の誕生から現在(いま)」のテーマのもと、県内外のたくさんの方々に受講して頂きました。
 そしてコロナ禍感染症拡大の中、2020年、2021年と2年間のブランクを経て、2022年の連続講座のテーマは「日本の子どもの本」です。
未来に向かって成長する子ども達を支え、本のつなぎ手として子どもの本をより深く学ぶために、連続講座を開催いたします。



過去の連続講座のレポートをご覧いただけます。                         




 Report  2019
子どもの本の誕生から現在(いま)
2018
東欧・南欧の子どもの本
 2017
アジアの子どもの本
2016
オーストラリア・ニュージーランドなどの子どもの本
2015
アメリカの子どもの本
2014
仏・ベルギー・オランダの子どもの本
 2013
ロシアの子どもの本
2012
ドイツの子どもの本
 2011
北欧の子どもの本
2010
イギリスの子どもの本
クリックしてくださいね★

  





2022年
日本の子どもの本



  
                                     

2022年度チラシはこちらから






        

1  6月4日(土) 午前の部:10:00~12:00  午後の部:13:00~15:00
        ※初回は、9:50から開会式をおこないます。

午前 千年にわたる日本の絵本の歴史(1
        

平安朝の絵巻物から江戸期の絵本まで
   

午後 千年にわたる日本の絵本の歴史(2)
   
    
近代の自分の夜明け―明治期の絵本・絵雑誌

      

   


講師 正置 友子(まさき ともこ
1940 年名古屋市生まれ。1973 年青山台文庫開設。1994 年~2000 年英国でヴィクトリア時代の絵本を研究。 2001 年ローハンプトン大学より博士号(PHD)を取得。2012 年~2018 年、大阪大学大学院にて哲学を研究。博士号(学術)を取得。聖和大学教授を経て、現在、青山台文庫・絵本 学研究所主宰。著書に『A History of Victorian Popular Picture Books』『イギリス絵本留学滞在記』『メルロ・ ポンティと〈子どもと絵本〉の現象学―子どもたちと絵本を読むということ―』(風間書房)など。現在、『生きるための絵本』(仮題)執筆中。



                 

                         講義中の正置友子さん


講座レポート

   
午前の部
「千年にわたる日本の絵本の歴史(1)

      平安朝の絵巻物から江戸期の絵本まで

先生の講義は、はじめに―現在の絵本の状況に始まり、絵本の起源ともいうべき絵巻物から、絵本の誕生、もう一つの絵本ともいわれる浮世絵等々、パワーポイントの中に落とし込まれた数百枚の絵を通して解説してくださいました。手書きで一点物の巻物から、絵本の複製技術(板目木版)が発展して大量生産ができるようになったことで発展していく様は、現在の出版に通ずるものを感じました。
2020・2021とコロナ禍で開催を延期していた【日本の子どもの本】が、2022として満を持して開催されました。とはいえ、コロナの影響がまったく無くなったわけではなく、入場制限をして、座席も市松模様に使用するようにし、最前列の机を排除して演台との距離を確保しました。展示本も、従来のように手に取って見ていただくことは叶わず、演台上に面出しの限られた数の展示となり、感染対策最優先の実施となりました。また、今年初めての挑戦として、リアル開催の講座の様子をオンライン(Zoom)で映し出すハイブリット配信をいたしました。慣れないことでビクビクの開催でしたが、無事スタートを切ることができました。


午後の部
「千年にわたる日本の絵本の歴史(2)」
    近代の夜明け―明治期の絵本・絵雑誌

午後の部は、先生から「チラシ作成時には、「近代の夜明け―明治期の絵本・絵雑誌」と題しておりましたが、「桃太郎」を取り上げることで、受講生により分かり易く理解していただけることから、「桃太郎」―江戸期から現代までの絵本におけるイメージの変遷―とさせてください」との説明がありました。  日本と世界の歴史年表の比較から始まるレジュメに、絵本と歴史の関係性の深さを示されました。国は、「桃太郎」の唱歌に何を求めたのか?歴代の絵本は、作家は、「桃太郎」で何を表現しようとしていたのか等々、これまたパワーポイントに取り込まれた画像から解説していただきました。


     

2  7月10日(日) 午前の部:10:00~12:00  午後の部:13:00~15:00
        

午前 明治、大正、そして、昭和の敗戦後までの児童文学
        

               ー「声」の時代、「声」のわかれー
   

午後 未明、賢治、南吉
   
    


      

講師 宮川 健郎(みやかわ たけお)
1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業。同大学院修了。宮城教育大学助教授等を経て、現在、一般財団法人 大阪国際児童文学振興財団(IICLO)理事長、武蔵野大学名誉教授。日本児童文学学会会長。宮沢賢治学会イーハトーブセンター理事。産経児童出版文化賞選考委員。小川未明文学賞選考委員。元・国立国会図書館国際子ども図書館客員調査員。『宮沢賢治、めまいの練習帳』(久山社)、『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『物語もっと深読み教室』(岩波ジュニア新書)、『名作童話を読む 未明・賢治・南吉』(春陽堂書店)など著書編著多数。



                 

                         講義中の宮川健郎さん


講座レポート

   
午前の部
「明治、大正、そして、昭和の敗戦後までの児童文学      
          ー「声」の時代、「声」のわかれー」


「子ども」の本の始まりは、巌谷小波の『こがね丸』(博文館1891年)と言われています。 文章は書き言葉独自の言い回しで、子ども自身が読むのではなく声に出して読んでもらうことを前提に書かれていたようです。そのころは、「口演童話」と呼ばれストーリーテリングのようなもので大正時代は、教師などが語っていましたが、その後ラジオに取って代わられました。  石井桃子は「子どものための物語は口で話す『お話』と切り離せないものだ」「読んでやったり口で話したりできないお話は、子どもにはおもしろくない」と『母の友』に書いています。そして、『だれも知らない小さな国』をストーリーに関係ない所は端折って子どもたちに読んであげたそうです。しかし古田足日は、『だれも知らない小さな国』を「風景描写が優れている」と評価していました。音読詩的・象徴的な言葉で心像風景を描く短編『近代童話』から、黙読する散文的な日常の言葉の長編『近代児童文学』へ分かれたのが、この『だれも知らない小さな国』と言ってよいでしょう。そして、現代児童文学は今まで子どもにとってタブーだった戦争や死などの問題も取りあげるようになります。  また、文章と絵が切り離せない視覚的な、「絵本」と違い「幼年童話」は挿絵を外しても内容が分かるもので、言葉が大切です。言葉だけの読み聞かせも可能です。子どもたちの言葉を豊かにするために大切ですが、幼年文学の作品は現在とても少ないのが現状です。  「子どもの本」の日本における流れや分類についてわかりやすく例を挙げてお話していただき、とても有意義な講座でした。


午後の部
「未明、賢治、南吉」
    
子どもの文学は、地位がとても低かったし、今も低い。
〇小川未明は、自己表現として童話を書いていて、子どものためではなかったようで、1950年代には批判されていました。意味の含みが多く、象徴的で子どもには理解できない作品が多く、」子どもには受け入れられない、と言われています。
〇新美南吉は若くして亡くなったので、生前にはあまり作品が出ていませんでした。しかし没後原稿を管理していた北原白秋の弟子の巽聖歌によって、作品は世に出されます。石井桃子は、「賢治に次ぐすばらしい作家」と評価し、世に広めました。ストーリーがどんどん進み、声に出して読んでわかりやすい作品が多いです。 教科書にも多く取り上げられていますが、教科書に載るには文字数の制限などがあるために、長編の児童文学作品はあまり多くありません。
〇宮沢賢治は、ファンタジー作品と言われていますが、ファンタジーとは少し違います。ファンタジーとは、普通と不思議が区別出来ていますが、賢治の作品は普通と不思議が重なって二重の風景になっています。そこが賢治の独自性です。
 客観的にそれぞれの作家についてわかりやすくお話していただき、改めて作品を読み返したいと思いました。


    

3  8月28日(日) 午前の部:10:00~12:00  午後の部:13:00~15:00
        

午前 美術評論家から観た 日本の絵本100年の歩みⅠ
        

           ヨーロッパの影響が入ってくる大正期の絵雑誌
        ~1950年代まで

   
 
午後 美術評論家から観た 日本の絵本100年の歩みⅡ
       
        1960年代から始まる絵本の潮流~現代絵本まで

   
    
講師 松本 猛(まつもと たけし)
1951年生まれ。美術・絵本評論家、作家、横浜美術大学客員教授、ちひろ美術館常任顧問、美術評論家連盟会員、日本ペンクラブ会員。1977年にちひろ美術館・東京、1997年に安曇野ちひろ美術館を設立。同館館長、長野県信濃美術館・東山魁夷館(現・長野県立美術館)館長、絵本学会会長を歴任。著書『いわさきちひろ 子どもへの愛に生きて』(講談社)、『安曇野ちひろ美術館をつくったわけ』(新日本出版社)、絵本に『ふくしまからきた子』『ふくしまからきた子 そつぎょう』(岩崎書店)など多数。

      



                 

                         講義中の松本 猛さん


講座レポート

   
午前の部
「美術評論家から観た 日本の絵本100年の歩みⅠ
 ヨ-ロッパの影響が入ってくる大正期の絵雑誌~1950年代まで」

美術評論家から観た 日本の絵本100年の歩みⅠ
 ヨ-ロッパの影響が入ってくる大正期の絵雑誌~1950年代まで
・日本において「絵本」の始まりは、写本時代を経て、1608年本阿弥光悦と角倉素案が、京都・嵯峨の地を舞台に刊行された「嵯峨本」の「伊勢物語」・「徒然草」などです。
 それまでは、言葉で伝えられていた物語が、日本独自の印刷方法で本として出版されました。当時絵本は、文字を覚えさせるための本、卒業する文字だけの本に移っていきました。スクリ-ンに映し出される画像から、「源氏物語」のなかにも、絵本を読み聞かせしているような場面もあることも知りました。
近代絵本の先駆けとしての明治の赤本が出版された。ヨ-ロッパから帰国された人たちの中から、女性や子どもをないがしろにしたたら文化ではないなどの主張があり、これらの関わりから、「コドモノトモ」「赤い鳥」「コドモノクニ」と繫がっていった。
「コドモノクニ」の読者には、松居直氏 赤羽末吉氏 いわさきちひろ氏らの文化人がいた。彼らの存在が、その後の絵本の歴史・発展に大きく関わりがあったから、現在の絵本環境があると思いました。



午後の部
「美術評論家から観た 日本の絵本100年の歩みⅡ
          1960年代から始まる絵本の潮流~現代絵本まで」

    
・現代絵本の幕開けは絵雑誌と絵本からでした。昔話や童話が子どもの本の基本でした。赤羽末吉氏が描く「かさじぞう」「だいくとおにろく」などは、大和絵などの日本文化を意識した作品で、「かさじぞう」は、水墨画で墨の濃淡で描かれている。この時代になって初めて絵本の絵も芸術であると認められた。「ス-ホの白い馬」は、ぺ-ジをめくる度に時間の経過を現し、モンゴルの大草原を現すために、横長の作りにしている。
信貴山絵巻に影響を受けている瀬川康夫氏の「ふしぎなたけのこ」は、ブラティスラバ絵本原画展でグランプリを受賞した。その後、世界で認められる絵本作家として荒井良二氏など多数を輩出している。
 本会の顧問岩村和夫氏の「14ひきのシリ-ズ」は、自然とともに生きる哲学であり、人間として何が一番良い生活かを理解しており、自然の図鑑としても読めるとの評でした。
 次々に映し出される素晴らしい数々の作品を観、流れる如く作品についての説明、その作品や作家である、安野光雅氏・松居直氏やほかの方々との交友逸話などたくさん話され、とても纏めることはできませんでした。
 絵本などの原画が分散され、紛失することを懸念し、美術館を開設したこと。現在も原画を守るための活動をなさっていることなどなど、ゆったりした時間を設けて、再度ご講話を拝聴できることを願っています。


 

4  9月24日(土) 午前の部:10:00~12:00  午後の部:13:00~15:00
        

午前 「現代児童文学」の展開 
       

午後 「現代児童文学」の転換
       
 
       
講師 佐 藤 宗 子 (さとう もとこ)
1955 年東京生まれ。児童文学研究者。東京大学教養学部卒業。同大学大学院人文科学研究科で比較文学比較文化を学ぶ。千葉大学名誉教授。元日本児童文学学会 会長。翻訳・再話など比較文学的な研究や、日本児童文学史、現代児童文学の作品論など、多面的に批評活動をしてきた。近年は第二次大戦後の少年少女向け文学叢書を対象にした研究などを進めている。著書に『「家なき子」の旅』(平凡社)、『自分なりの読み方をしよう』(ポプラ社)、『<現代児童文学>をふりかえる』(久山社)など。

      



                 

                         講義中の佐藤 宗子 さん


講座レポート

   
午前の部
「現代児童文学」の展開
 
第二次大戦後から1980年代の児童文学の流れをお話しいただきました。 1950年ころから世界の児童文学を翻訳した全集が出版されます。子ども向けのマンガ、テレビアニメも浸透していきます。1959年には日本のファンタジーの原点とよべる2つの長編ファンタジーが刊行されます。佐藤さとるの『だれも知らない小さな国』といぬいとみこの『木かげの家の小人たち』です。1960年代には児童文学の商品価値が出版業界にも浸透していきます。経済や社会情勢の移り変わりとともに内容も多様化し、リアリズムを追求するもの、社会に対する問題提起・告発をするもの、ナンセンスやユーモア、ファンタジー作品も多く発表されました。専業主婦の割合が高く、読書運動が盛んにおこなわれていました。
 

午後の部
「現代児童文学」の転換」 
        

・午後は1980年代から現代にかけてのお話でした。1970年代の終わりから80年代にかけて多様化していった児童文学は、2つの転換期を迎えます。「タブーの崩壊」と「近代的「子ども」観の見直し」の動きです。現実の社会で起こる校内暴力や少年犯罪を起こす子どもたちを見て、児童文学も影響を受けていきます。これまで児童文学が取り上げなかった家庭崩壊(親の離婚、家出)、性や死といったテーマを扱った作品が発表され、話の終わりを読み手に委ねるオープンエンディング、複数のストーリーが同時進行するものなど、プロットが複雑化していきました。「ズッコケ三人組」シリーズで有名な那須正幹の『ぼくらは海へ』『六年目のクラス会(のちに改題The End Of World)』などは、この作家の違った一面を見せてくれます。 1990年代以降メディアは急速にデジタル化され、書籍を出版・流通させるという手段も変化してきています。一般書と児童書の垣根が、ますますあいまいになりつつあるのが現状だといえます。 
 


 





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